国際的な環境団体の米ピュー・エンバイロンメント・グループと漁業コンサルタントの英ポセイドン・アクアティック・リソース・マネジメントは先ごろ、EUの漁業補助金は乱獲に拍車をかけているとする共同調査報告書を発表した。
\この調査は2000年~2006年に域内10カ国を対象に行ったもの。7年間に10カ国が受け取った補助金はEU全体の95%にあたる約49億ユーロで、スペインが46%と最も多く、イタリア、フランス、ギリシャ、デンマーク、英国など9カ国で49%を占める。
\報告書によれば、補助金の29%は漁船の現代化や建造といった乱獲につながる目的に使われており、漁船の解体や一時的な漁獲禁止への支援など健全な漁業に使われたのは17%だけだった。調査対象期間に新たに建造された漁船は約3,000隻、現代化された漁船は9,000隻に上ったのに対して、解体されたのはギリシャやイタリアの沿岸用の小型船舶を中心に約6,000隻にとどまった。また、スペインでは補助金の90%以上が漁業資源の安定化に効果がないか逆効果となる措置に投じられ、漁業資源安定化に向けたプロジェクトに補助金の大半を使ったのはポーランドだけだった。
\欧州委員会の補助金は資源の安定化とEUの漁業の競争力強化を目的としているが、ピュー・エンバイロンメントは「公的資金が乱獲に使われ海洋環境に壊滅的な影響を与えている」として、乱獲を促す措置への資金提供をやめるよう求めている。また2007年以降は欧州漁業基金(EFF)により補助金が支給され、使途などの透明性が失われており調査も不可能になったという。
\今回の結果について欧州委のスポークスマンは、「漁船の現代化に対する支援は環境への悪影響を減らす技術や機器に使われている」と反論し、報告書が提起した問題の多くについては現在の漁業プログラムの中ですでに取り組んでいると主張している。
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