2010/4/26

総合 –EUウオッチャー

ベルギー首相が辞意表明、言語圏の対立で連立政権が崩壊

この記事の要約

ベルギーのルテルム首相は22日、国王アルベール2世に辞表を提出した。連立政権に加わるオランダ語圏のリベラル系政党「オープンVLD」がフランス語圏とオランダ語圏の対立を背景に離脱を表明したことで、政権維持が困難になったため […]

ベルギーのルテルム首相は22日、国王アルベール2世に辞表を提出した。連立政権に加わるオランダ語圏のリベラル系政党「オープンVLD」がフランス語圏とオランダ語圏の対立を背景に離脱を表明したことで、政権維持が困難になったため。国王は辞表の受理を留保しているが、内閣総辞職となれば議会は解散し40日以内に総選挙が実施される。

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ルテルム首相は昨年11月、ファンロンパイ前首相がEUの初代大統領(欧州理事会常任議長)に就任したことに伴い後を引き継いだが、2008年12月にも金融大手フォルティスへの救済や言語圏の対立をめぐり9カ月で首相を辞任した経緯がある。

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ベルギーでは言語圏の対立を背景に2007年6月の総選挙から半年間も新内閣が発足せず、同年12月から2008年3月まで暫定政権が国政を担うという事態が起きている。今回の連立崩壊は両言語の住民が住むブリュッセルとその周辺地域の選挙区の線引き問題について、オープンVLDが首相の対応に不満を持ったことによるもの。同党の離脱で連立政権はルテルム首相率いる最大与党でオランダ語系のキリスト教民主党とフランス語圏の小政党3党となり、過半数はかろうじて維持するものの政権は不安定となる。

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王室は声明で「政治的危機は国民の経済や社会福祉、ベルギーの欧州における役割に大きな打撃を与える」と表明しているが、政治的混乱が経済回復を遅らせるとの懸念が出ている。ベルギーの今年の財政赤字は対国内総生産(GDP)比4.8%に膨らみ、債務残高はGDP比で100%を超えると予想されており、政治危機が引き金となって債券市場で投機筋がベルギーを標的にする可能性を指摘する声もある。なお、ベルギーは7月から半年間の議長国を務めることになっている。

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