2010/5/10

総合 –EUウオッチャー

今年のユーロ圏成長率は0.9%、0.2ポイント上方修正=欧州委春季予測

この記事の要約

欧州委員会は5日発表した春季経済予測で、ユーロ圏16カ国の2010年の実質域内総生産(GDP)成長率を0.9%とし、秋季予測(09年11月)の0.7%から0.2ポイント上方修正した。世界経済の復調による輸出拡大を見込んだ […]

欧州委員会は5日発表した春季経済予測で、ユーロ圏16カ国の2010年の実質域内総生産(GDP)成長率を0.9%とし、秋季予測(09年11月)の0.7%から0.2ポイント上方修正した。世界経済の復調による輸出拡大を見込んだもので、2009年のマイナス4.1%から大きく持ち直すとみている。ただ、ギリシャ危機に端を発した信用不安や内需低迷で成長はなお力強さを欠く見通しで、予想成長率は米国の2.8%、日本の2.1%を大きく下回る水準にとどまった。

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2011年の予想成長率は1.5%で、秋季予測から据え置いた。EU27カ国ベースの成長率は2010年が1%となり、0.3ポイント上方修正。2011年は0.1ポイント上方修正して1.7%とした。

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信用不安の震源地となっているギリシャの予想成長率は、2010年がマイナス3%。秋季の0.3%から大幅に下方修正した。2010年にはマイナス0.5%まで持ち直すとみているが、ユーロ圏で唯一、マイナス成長となる。今回の予測には、ギリシャ政府がユーロ圏諸国、国際通貨基金(IMF)からの緊急融資を取り付けるため新たに策定した歳出削減策の影響は盛り込まれておらず、欧州委のレーン委員(経済通貨問題担当)は今年の成長率はマイナス4%まで悪化する可能性を指摘した。

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ユーロ圏ではギリシャ危機に伴うユーロ安も追い風となって輸出の回復が続いているが、内需の柱となる個人消費は低迷しており、本格的な景気回復に向けた障害となっている。欧州委は「内需低迷が引き続き、回復加速の妨げとなっている」と指摘した。また、信用不安がポルトガル、スペインなど財政悪化国に飛び火する懸念がくすぶっていることが大きな不安要素で、レーン委員は「今年の経済成長見通しの改善は良いニュースだが、金融安定関連のリスクが成長を脱線させないようにしなければならない」と語った。

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ユーロ圏16カ国の2010年の財政赤字は域内総生産(GDP)比6.6%と、昨年の同6.3%から膨らむ見通し。EUが財政規律で上限と定めているGDP比3%を下回る国はゼロとなる見込みだ。国別ではアイルランドが11.7%、スペインが9.8%と、ギリシャの9.3%を上回る。EU全体では英国が12%で最悪となっている。

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ユーロ圏の失業率については、2010年に10.3%と、昨年の9.4%から悪化すると予想。さらに2011年には10.4%まで膨らむとみている。一方、インフレ率は原油高で上昇傾向にあるものの、雇用不安による個人消費低迷などにより急激な物価上昇は抑えられ、2010年は1.5%、11年は1.7%と、欧州中央銀行(ECB)が上限目標値とする2%を下回る水準にとどまるとみている。

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