2010/5/17

総合 –EUウオッチャー

ギリシャ危機再発防止策発表、各国予算の事前審査など=欧州委

この記事の要約

欧州委員会は12日、ユーロ圏全体を揺るがすギリシャ危機のような信用不安問題の再発防止策を発表した。各国にEUの財政規律を順守させるため、予算案を事前にEUがチェックすることなどを柱とする内容。金融政策は共通化されているが […]

欧州委員会は12日、ユーロ圏全体を揺るがすギリシャ危機のような信用不安問題の再発防止策を発表した。各国にEUの財政規律を順守させるため、予算案を事前にEUがチェックすることなどを柱とする内容。金融政策は共通化されているが財政がばらばらというユーロ圏が抱える欠陥の是正を図る。1999年のユーロ導入以来、最大の機構改革となる。

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EUでは「安定成長協定」と呼ばれる非ユーロ参加国も対象とする財政規律があり、各国は財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることが義務付けられている。しかし、ユーロ圏の中核であるドイツも含めて規律違反が常態化しており、昨年に赤字が上限内に収まったのはルクセンブルク、フィンランドだけという状況だ。

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欧州委の提案では、加盟国の予算案を各国議会が承認する前にEU全体で審査し、適切な財政運営が行われているかどうかを各国が相互にチェックする体制にする。来年から実施したい考えだ。あくまでも予算決定権は各国にあり、EUが見直しを強制はできないものの、事実上の介入により圧力を加え、赤字拡大などを食い止める。

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規律違反に対する効率的な制裁発動も盛り込んだ。安定成長協定では、3年連続で違反した国に巨額の制裁金を科す仕組みがあるが、その衝撃の大きさから一度も発動した例がないことを踏まえたもの。新たにEU補助金の凍結といった制裁規定を加え、厳しく適用していく方針だ。欧州委のバローゾ委員長は、財政赤字削減を怠っている国に対して、将来に深刻な財政危機に陥った場合に備え、強制的に準備金を積み立てさせる制度の導入を検討していることも明らかにした。

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恒久的な支援基金創設も

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EUはギリシャ危機対策として、同国にIMFと協調して向こう3年間で総額1,100億ユーロの緊急融資を行うことを決定済み。さらに10日には、ギリシャ危機が波及して深刻な資金難に陥った国への緊急支援策として、IMFと共同で7,500億ユーロの融資を行う制度の創設を決めた。「ユーロ防衛基金」ともいえる同制度では、欧州委がEU予算を担保とする債券発行で600億ユーロを調達し、非ユーロ圏の加盟国を対象とする既存の緊急支援枠を500億ユーロから1,100億ユーロに拡大し、ユーロ圏諸国も支援できる基金を作る。また、ユーロ圏各国の政府保証により総額4,400億ユーロの基金を創設し、危機に陥った国に融資保証を行う。同枠組みにはユーロ圏16カ国のほかスウェーデン、ポーランドが参加する。

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ただ、ユーロ防衛基金は期間3年間の限定措置。欧州委は将来発生するユーロ圏の信用危機に備え、恒久的な支援基金を設置する方針も打ち出した。

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今回の危機再発防止策は、加盟国による承認が必要。各国の予算策定にEUが介入することの是非が大きな焦点になる見通しだ。とくに、EU統合の深化に懐疑的で、国家主権維持にこだわる英国の対応がカギを握るとみられる。

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