2010/5/25

総合 –EUウオッチャー

EU財務相理、ヘッジファンド規制案承認

この記事の要約

EU加盟国は18日開いた財務相理事会で、ヘッジファンドなどの投資ファンドに対する規制案の内容で合意した。認可制を導入したうえで、EU域外の第3国に籍を置くファンドに関しては、第3国がEUと同等の規制レベルを備えている場合 […]

EU加盟国は18日開いた財務相理事会で、ヘッジファンドなどの投資ファンドに対する規制案の内容で合意した。認可制を導入したうえで、EU域外の第3国に籍を置くファンドに関しては、第3国がEUと同等の規制レベルを備えている場合に限って域内での活動を認めることなどが柱。一方、17日には欧州議会の経済金融委員会がファンド規制案を賛成多数で可決したが、こちらは第3国のファンドに対する規制が財務相理の案と比べてやや緩やかな内容になっており、加盟国と欧州議会の間で調整が必要となる。さらに金融街シティーを抱える英国は引き続き規制強化に反対しており、今後の交渉は難航が予想される。

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ファンド規制の対象となるのはヘッジファンドのほか、未公開株式を投資対象とするプライベート・エクイティ・ファンド、不動産ファンド、コモディティファンドなど。財務相理で合意した規制案は◇EU域内でのファンドの活動を認可制としたうえで、商品の販売先をプロの投資家に限定する◇投資方針、運用手法、リスク管理システムなどの情報開示を義務付ける◇自己資本規制を導入し、資産規模に応じて資本金の積み増しを義務付ける◇金融安定化のため、当局にレバレッジを制限できる権限を与える――などとなっている。

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焦点となっていたEU域外の第3国に登記しているファンドに関しては、規制レベルがEUと同等であることが認可の条件となる。現在EU内で活動している第3国のファンドの多くは規制が緩やかなケイマン諸島などの租税回避地に登記しているため、同ルールが適用されると域内での活動が実質的に不可能となり、相当数のファンドが撤退する事態も予測される。さらに域内に籍を置くファンドは1カ国で認可を取得すればEU全域で活動が認められるが、第3国のファンドにはこうした「パスポート」制度が適用されず、国ごとに認可を得る必要がある。

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これに対し、欧州議会の経済金融委で可決された案は、第3国のファンドがEUの定める基準やルールの順守に同意し、その国の当局が順守状況を監視することを条件に、域内での活動を認めるという内容。また、第3国がテロ資金対策やマネーロンダリングの取り締まりなどで一定の基準を満たしている場合は、その国のファンドにもパスポート制度が適用される。

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財務相理では英国のオズボーン新財務相が前政権と同様、規制案に反対を表明した。英国には欧州のヘッジファンドの80%、プライベート・エクイティ・ファンドの60%が集中しているが、その多くがケイマン諸島などに登記しているため、規制が強化されると撤退するファンドが相次ぎ、英国は金融センターとしての優位性を失う可能性が指摘されている。今回、財務相理は英国の反対を押し切って規制案を承認したが、合意文書には「一部の加盟国の懸念を考慮して」、欧州議会との交渉では「第3国ルール」などについて慎重に議論を進めるとの文言が盛り込まれた。

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