2010/5/25

総合 –EUウオッチャー

EUの財政改革作業部会が初会合、違反国への制裁強化で一致

この記事の要約

EU加盟国は21日、ブリュッセルで財政金融改革作業部会の初会合を開き、ギリシャ危機の再発防止に向けた財政規律違反国への制裁強化、危機管理のメカニズム構築を進める方向で一致した。部会は6月の首脳会議までに詳細を詰めて中間報 […]

EU加盟国は21日、ブリュッセルで財政金融改革作業部会の初会合を開き、ギリシャ危機の再発防止に向けた財政規律違反国への制裁強化、危機管理のメカニズム構築を進める方向で一致した。部会は6月の首脳会議までに詳細を詰めて中間報告をまとめ、10月の首脳会議で正式決定する方針だ。

\

ファンロンパイEU大統領を座長とする同作業部会は、3月末のEU首脳会議でギリシャへの金融支援を決めた際、将来にギリシャと同様の事態が起こるのを防ぐ対策をまとめるため設置が決まったもの。各国の財務相のほか、欧州中央銀行(ECB)、欧州委員会の代表が加わる。

\

議論のたたき台となるのは、欧州委が12日に発表した提案。財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内、債務残高をGDP比60%以内に抑えることを義務付ける安定成長協定に違反する国が相次ぐ中、加盟国の予算案を各国議会が承認する前にEU全体で審査し、適切な財政運営が行われているかどうかを各国が相互にチェックする体制にすることや、違反を繰り返す国への制裁強化を柱とする内容だ。制裁については、違反国にGDPの0.5%に相当する制裁金を科すという規定があるが、発動されたことがないことから、他の形での新たな制裁規定を盛り込むことも提案している。

\

これに加えて今回の会合では、ドイツがより厳しい制裁を提案した。同国はすでに決まったギリシャへの緊急融資や、ギリシャ以外のユーロ圏諸国が深刻な信用不安に陥ってデフォルト(債務不履行)の危機に瀕した場合に備えた緊急融資制度で最大の拠出国となることから、支援実施に高いハードルを設けたい思惑がある。このため、違反国には金融制裁以外に、EU補助金の支給凍結、EUの政策決定での投票権はく奪という制裁規定を盛り込むよう提案した。

\

さらにドイツは、デフォルトの危機に陥った国に対しては、EUがやみくもに支援をつづけるのではなく、あえて「秩序ある形」でデフォルトを宣言させ、市場の混乱を最小限に抑えながら整然と債務処理を進めさせるメカニズムを作ることまで提案した。

\

このほかベルギーが債務処理策として、加盟国が抱える債務の一部をプールしてEU共通の債務として扱い、信用力のある国が保証する制度の創設を提唱した。

\

今回の会合では、具体的なことは決めず、制裁強化を実現することだけを確認したが、ドイツの「デフォルト」案に対しては賛同国がなく、ファンロンパイ大統領は「短期的に現実的でない」と否定的な考えを表明。また、投票権はく奪など一部の提案については、EU基本条約の改定が必要となり、手続きに時間がかかることから、同大統領は「我々はできる限り現行協定の枠内で作業しなければならない」として、速やかに実行可能なものに絞って検討を進める意向を示した。

\