2010/6/21

産業・貿易

銀行取引データめぐり米と合意、欧州議会の対応が焦点に

この記事の要約

欧州委員会は15日、テロ対策を目的とする銀行取引データの米国への提供に関する協定案を採択した。EU加盟国から交渉権限を付与された欧州委と米政府は協定案の内容で合意しており、閣僚理事会と欧州議会の承認を経て新協定が発効する […]

欧州委員会は15日、テロ対策を目的とする銀行取引データの米国への提供に関する協定案を採択した。EU加盟国から交渉権限を付与された欧州委と米政府は協定案の内容で合意しており、閣僚理事会と欧州議会の承認を経て新協定が発効する。EU加盟国と米政府は昨年11月の時点で暫定的な協定に合意していたが、欧州議会は米国への個人情報の転送に強い懸念を表明してこれを否決した経緯があり、新たな協定案に対する議会の反応が注目される。

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米国は2001年の同時多発テロ以降、テロ資金追跡プログラム(TFTP)の下でテロ資金根絶に向けた取り組みを強化している。ベルギーに本部を置く国際銀行間通信協会(SWIFT)の米国オペレーションセンター(昨年末から欧州内に移転)はTFTPに基づき、米財務省の求めに応じて顧客の氏名、口座番号、受取人の氏名、送金の額や目的といった情報を提供してきた。しかし、EU内ではSWIFTからの情報提供が明るみに出た06年以来、加盟国の同意を得ずにEUと比べてデータ保護対策が甘いとされる米国に個人情報が移転されることへの反発が強まり、EUと米国は改めてデータ利用の条件などについて協議する必要に迫られた。

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新たな協定案によると、米当局から送金データなどの提供を求められた場合、欧州刑事警察機構(ユーロポール)はその情報がテロ防止やテロ組織の資金源を突き止めるうえで必要なものかどうかを事前に検証する権限を持つ。また、米側の要求するデータが必要最小限の範囲かどうかも併せてチェックし、これらの条件を満たしていない場合はSWIFTからのデータ転送を差し止めることができる。さらにEU側は欧州委、データ保護当局および司法当局の代表で構成する専門チームを立ち上げて、協定の実施状況を定期的に監視し、欧州議会に結果を随時報告する。このほか◇EU側から提供されたデータが不正に使用された場合、米国の司法制度に基づいて法的救済を受けることができる◇米国から第3国にデータを転送する際はさらに厳格な個人情報保護ルールを適用しなければならない――などが協定案に盛り込まれている。

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欧州委のマルムストロム委員(内務担当)は声明で「欧州委はEU市民の安全を守りながら、同時に個人情報の保護を完全に保障する協定を目指して米側と交渉を続けてきた。新たな協定案は欧州議会や加盟国の懸念を踏まえた内容によっており、(欧州議会によって)否決された暫定合意と比べて個人情報保護対策が大幅に強化されている。新協定の早期発効に向け、必要な手続きを迅速に行うよう閣僚理と欧州議会に要請する」と述べた。

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