2010/6/28

産業・貿易

欧州議会がファンド規制案の採決延期、「第3国ルール」合意に至らず

この記事の要約

欧州議会は25日、ヘッジファンドなど投資ファンドに対する規制案の採決を9月以降に先送りすることを決めた。EU加盟国は5月の財務省理事会で規制案を採択しており、欧州議会は加盟国と意見調整した上で7月の本会議にかける予定だっ […]

欧州議会は25日、ヘッジファンドなど投資ファンドに対する規制案の採決を9月以降に先送りすることを決めた。EU加盟国は5月の財務省理事会で規制案を採択しており、欧州議会は加盟国と意見調整した上で7月の本会議にかける予定だったが、EU域外の第3国に籍を置くファンドの扱いをめぐって合意することができず、夏季休会前の採決を断念した。今後は7月1日付でスペインから議長国を引き継ぐベルギーを中心に、加盟国、欧州議会および欧州委員会の間で調停作業が進められることになる。

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ファンド規制はヘッジファンドのほか、未公開株式を投資対象とするプライベート・エクイティ・ファンド、不動産ファンド、コモディティファンドなどを対象に、EU域内での活動を認可制としたうえで、投資方針や運用手法、リスク管理システムなどの情報開示を義務付けるという内容。自己資本規制を導入し、資産規模に応じて資本金の積み増しを義務付けることや、金融安定化のため、当局にレバレッジを制限できる権限を与えることなども盛り込まれている。

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焦点となっているEU域外の第3国に登記しているファンドに関しては、財務相理で合意した案では規制レベルがEUと同等であることが認可の条件となる。また、域内に籍を置くファンドは1カ国で認可を取得すればEU全域で活動が認められるが、第3国のファンドにはこうした「パスポート」制度が適用されず、国ごとに認可を得る必要がある。これに対し、欧州議会の経済金融委で可決された案では、第3国のファンドがEUの定める基準やルールの順守に同意し、その国の当局が順守状況を監視することを条件に、域内での活動が認められる。また、テロ資金対策などで一定の基準を満たしている第3国に籍を置くファンドに関しては、域内のファンドと同様にパスポート制度を適用するなど、全体として緩やかな内容になっている。

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EU内での意見調整が難航するなか、産業界は規制の見直しを求めてロビー活動を活発化させている。25日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、英仏独の産業連盟(CBI、MEDEF、BDI)は欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)に共同書簡を送り、厳格なファンド規制が域内企業への投資を鈍らせかねないと警告。とりわけプライベート・エクイティ・ファンドに対する情報開示ルールの見直しを要求したもようだ。3団体は「雇用と経済成長を生み出す革新的なビジネスへの長期的な支援が不可欠な現状で、企業と投資家の意欲を減退させるルールを受け入れることはできない」と強調している。

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