2010/7/5

総合 –EUウオッチャー

財政規律違反への制裁強化案発表、EU補助金の支給凍結など=欧州委

この記事の要約

欧州委員会は6月30日、EUの財政規律に違反した国に対する制裁強化の具体案を採択した。規律違反国にEU補助金の支給を凍結することや、制裁金として一定額を有利子で積み立てることを求める内容。10月のEU首脳会議での正式決定 […]

欧州委員会は6月30日、EUの財政規律に違反した国に対する制裁強化の具体案を採択した。規律違反国にEU補助金の支給を凍結することや、制裁金として一定額を有利子で積み立てることを求める内容。10月のEU首脳会議での正式決定を目指す。

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規律違反国への制裁強化は、ギリシャ危機の再発防止に向けた財政規律強化策の一環。EUでは財政規律を定めた安定成長協定に基づき、各国は財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内、債務残高をGDP比60%以内に抑えることを義務付けられている。すでに違反国への制裁規定はあるが、発動には複雑な手続きを要することなどから、これまで一度も適用されたことはない。EUはこうした状況がギリシャをはじめとする加盟国に財政悪化を助長させたとの反省を踏まえ、ファンロンパイEU大統領を座長とする作業部会が制裁強化を検討している。

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今回の欧州委案は、作業部会でのたたき台となるもの。補助金凍結は非ユーロ参加国を含めたEU27カ国が対象で、規律に違反した場合に農業、地域支援などのEU補助金の支給を停止する。財政再建が進めば凍結を解除するが、改善がみられない場合は補助金受給の資格をはく奪する。制裁対象国はEUから補助金を凍結された場合も、農民など補助金の受益者に対して、自国の負担で予定の額を支払うことを求められる。

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有利子の積み立てはユーロ圏16カ国に適用される。対象国が財政再建を怠れば、積立金はEUに没収される。一方、違反国に厳しく対処することを求めるドイツは、EUの政策決定での投票権を一時的にはく奪することを提唱しているが、同案は盛り込まれなかった。

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欧州委のレーン委員(経済通貨問題担当)は、これまで制裁が甘かったことがユーロ圏の財政悪化を招いたとの認識を示し、「いまや行動を起こすときだ。時間を無駄にする余裕はない」と述べ、制裁強化への決意を示した。

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欧州委は最終案を9月中にまとめたい考え。補助金凍結の規模、凍結は財政規律に違反すれば自動的に発動されるのか、加盟国の承認が必要とするのかといった詳細をさらに詰めることになる。

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財政規律強化をめぐっては、作業部会は加盟国で適切な財政運営が行われているかどうかを各国が相互にチェックするシステムを2011年から導入することも検討している。これについて欧州委は今回、毎年1月に欧州委が同年の経済成長率の予測などをまとめた報告書を提示、これに基づいて各国が4月に財政計画をまとめ、欧州委、財務相理事会の意見を聞いた上で、予算案を固めるという案を打ち出した。

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