2010/7/12

産業・貿易

金融監督新機関の設立法案、欧州議会が採決先送り

この記事の要約

欧州議会は7日開いた本会議で、金融危機の再発防止に向けた新たな金融監督体制の構築に関する法案について審議したが、新機関の権限についてなお調整が必要として、採決を見送った。採決は9月以降に持ち越される見通しだ。\ 法案の柱 […]

欧州議会は7日開いた本会議で、金融危機の再発防止に向けた新たな金融監督体制の構築に関する法案について審議したが、新機関の権限についてなお調整が必要として、採決を見送った。採決は9月以降に持ち越される見通しだ。

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法案の柱は、金融システム全体のリスクを監視する「欧州システミック理事会(ESRB)」と、EUレベルで銀行・保険・証券の各セクターを管轄する3つの監督機関の新設。このうちセクター別の3監督機関が大きな論議の的となっている。

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EUにはすでに銀行・保険・証券市場を監視するセクター別の委員会が設置されているが、欧州委に助言を行う機関としての位置付けにとどまっており、各国当局が協調して金融市場を監督するシステムは整っていない。新体制では3つの委員会に代わって新たに「欧州銀行監督機構(EBA)、欧州保険・年金監督機構(EIOPA)、欧州証券監督機構(ESMA)が創設され、EU各国の当局者間の調整や、EUルールが適正に運用されるための解釈や基準の策定といった機能を担うほか、危機に際して緊急対応策を採用する権限などが与えられる。さらに各セクターの監督機関による協力体制を強化するため、3機関の代表で構成する合同委員会を設置。3機関と合同委員会、さらに各国当局を加えて「欧州金融監督システム」を構築し、金融機関に対する監督の実効性向上を図る。

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この欧州金融監督システムは、加盟国が個別に行う監督を調整する機関で、日常の監視活動は各国当局が引き続き行うことになっているが、何らかの問題が起きて当事国の当局が対応策で合意できない場合、拘束力のある決定を下す権限を持つ。ただ、加盟国に公的資金注入など財政出動を伴う措置を強制することはできない。さらに、当事国が同機関の決定を不服とした場合、事実上の拒否権を行使することができる。いずれも英国に譲歩して法案に盛り込まれた。

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これについて、新設機関が加盟国に対して大きな権限を有するのが望ましいとする欧州議会は修正案をまとめたが、なお加盟国側と協議する余地があるとして、法案の採決を先送りした。

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