2010/7/12

産業・貿易

GM作物加工品は特許権の保護対象外、欧州裁がモンサントに敗訴判決

この記事の要約

欧州司法裁判所は6日、米農業化学大手モンサントが開発した除草剤耐性を持つ遺伝子組み換え(GM)大豆(ラウンドアップ・レディ大豆、以下RR大豆)をめぐる特許侵害訴訟で、RRを利用したアルゼンチン産大豆粉のEU域内における輸 […]

欧州司法裁判所は6日、米農業化学大手モンサントが開発した除草剤耐性を持つ遺伝子組み換え(GM)大豆(ラウンドアップ・レディ大豆、以下RR大豆)をめぐる特許侵害訴訟で、RRを利用したアルゼンチン産大豆粉のEU域内における輸入・販売の差し止めを求めたモンサントの訴えを退ける判決を言い渡した。同裁判所の法務官は今年3月、GM作物の特許権は加工品には効力が及ばないとの見解を表明しており、これに沿った判決内容となった。

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RRはモンサント製のグリホサート除草剤「ラウンドアップ」に耐性のある遺伝子が組み込まれた作物で、大豆、トウモロコシ、ワタ、ナタネの4種類が商品化されている。問題となっているのはアルゼンチンからEU市場に輸入された大豆粉。アルゼンチンではRR大豆に特許権が認められていないが、モンサントによると同国で栽培される大豆の95%がRR大豆の遺伝形質を持つ。

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同社が2005-06年にかけてオランダに輸入されたアルゼンチン産大豆粉を調査したところ、EU域内で特許保護の対象となっているPR大豆のDNA配列が確認された。このためモンサントは欧州の輸入業者3社を特許権侵害でハーグ地方裁判所に提訴。同裁判所が特許保護の範囲についてECJに判断を求めていた。

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ECJは判決で、DNA配列の特許権は作物の生育中にのみ効力が及ぶもので、GM作物の加工品に含まれる「残留状態」のDNA配列はもはや機能を果たさないため、特許保護の対象にはならないと指摘。RR大豆を原料とする大豆粉には特許権の効力が及ばないため、特許権の侵害を理由にEU市場でのアルゼンチン産大豆粉の流通を阻止することはできないと結論づけた。

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なお、モンサントは判決に先立ち、輸入業者との間で和解に達したとしてオランダでの訴訟を取り下げ、ハーグ地裁がこれを承認している。具体的な和解内容は公表されていない。

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