2010/8/2

総合 –EUウオッチャー

セルビアが国連に決議案提出、コソボ独立問題で

この記事の要約

セルビア政府は7月28日、国際司法裁判所(ICJ)がコソボの独立宣言は違法ではないとする判断を下したことを不服とし、「相互に受け入れ可能な解決策を見出す」ための協議を求める決議案を国連総会に提出した。ICJのコソボ独立支 […]

セルビア政府は7月28日、国際司法裁判所(ICJ)がコソボの独立宣言は違法ではないとする判断を下したことを不服とし、「相互に受け入れ可能な解決策を見出す」ための協議を求める決議案を国連総会に提出した。ICJのコソボ独立支持により、まだ独立を認めていない国の多くが承認に傾くと見込まれる中、セルビアは徹底抗戦の構えだ。

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AFP通信などが報じた決議案の草案で、セルビアは「領土問題の解決に際して、一方的な独立は受け入れられない方法だ」と指摘。「(セルビアは)関係各方面に対して、平和的な対話を通じて相互に受け入れ可能な解決策を見出すよう求める」としている。

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セルビアは草案に、コソボ地位問題そのものに関する協議を求める文言は盛り込まなかった。地位問題に触れると決議案の採択が難しく、またコソボ独立を認めた米国や独仏などEUの大国との対立を避けたいとの思惑が働いたもようだ。ただ、採択後に地位問題を持ち出すのは確実と目されている。

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コソボは2008年2月にセルビアの反対を押し切って一方的に独立を宣言。これまでに日米など69カ国が独立を承認した。EUでは27カ国のうちスペイン、ギリシャ、ルーマニア、キプロス、スロバキアを除く22カ国が承認している。

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セルビアはEU加盟を目指しており、昨年末に加盟を正式申請した。同国にとってEU加盟にはコソボ問題の解決が必要で、大きなジレンマを抱える。長期化する南北キプロス分断問題が障害となってEUとの加盟交渉が停滞しているトルコの二の舞にはなりたくないというのが実情だ。政府にはEU加盟に向けて、国連を通じてコソボと対話し、何らかの妥協点を見出したいという意図もあると思われる。

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