2010/8/23

総合 –EUウオッチャー

EUがカスピ海パイプライン建設を模索、「ナブッコ」実現に向けガス供給確保

この記事の要約

ロシアを迂回してカスピ海周辺の天然ガスを欧州に運ぶ「ナブッコ・パイプライン」計画をめぐり、EUはトルクメニスタンとアゼルバイジャンを結ぶパイプラインの建設に向けて両国政府との交渉を進めているもようだ。ナブッコのルートとな […]

ロシアを迂回してカスピ海周辺の天然ガスを欧州に運ぶ「ナブッコ・パイプライン」計画をめぐり、EUはトルクメニスタンとアゼルバイジャンを結ぶパイプラインの建設に向けて両国政府との交渉を進めているもようだ。ナブッコのルートとなるトルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリアの5カ国は昨年7月、パイプラインの建設に向けた政府間協定に署名しているが、供給源の確保がプロジェクトの最大の課題となっており、EUはカスピ海周辺諸国のうち天然ガスの埋蔵量が多いトルクメニスタンとアゼルバイジャンに期待を寄せている。ただ、資源外交に力を入れるロシア、イラン、中国もカスピ海周辺国へのアプローチを強めており、ナブッコ計画の実現に向けたガス供給国との交渉は予断を許さない。

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ナブッコはトルコからオーストリアまでの約3,300キロを結び、総工費は約80億ユーロに上る。EUは2011年の着工、14年の完成を目指しており、年間310億立方メートルの輸送能力が見込まれる。EUはガス供給源や輸送ルートの多様化を進めてエネルギー分野におけるロシア依存からの脱却を図ろうとしており、ナブッコ計画をエネルギー戦略の柱の1つと位置づけている。

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ブルームバーグ通信が入手した欧州委員会エネルギー総局の内部文書によると、EUはカスピ海を挟むトルクメニスタンとアゼルバイジャンの間に「少なくとも1本」の海底パイプラインを建設するため、両国政府との間で話し合いを進めている。協定書の草案には◇パイプラインの保有者が市場環境に即した条件で関連施設を最大限に活用することをトルクメニスタンとアゼルバイジャン政府が保証する◇パイプラインの保有者は輸送能力を制限したり、ガス供給の要請を拒否することができない◇パイプラインの運営会社の選定にあたり、両国政府が事前に協議する◇二国間のガス輸送は双方向とする――などが盛り込まれている。

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トルクメニスタンの天然ガス埋蔵量は8兆立方メートルを超えるとされる。同国では個人崇拝的な独裁体制を築いたニヤゾフ前大統領が死去した2006年を境に、欧州やアジア諸国によるガス争奪戦が本格化している。ナブッコ計画に参加するオーストリアのエネルギー大手OMVの首脳は「トルクメニスタンとアゼルバイジャンは距離的に近く、カスピ海の水深も深くはないが、障害があるとすれば政治的な問題だ」と指摘。両国からの天然ガス供給を確保することがナブッコ計画の成否を左右するとの認識を示し、EU主導で交渉を加速させる必要があると強調している。

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