2010/9/13

総合 –EUウオッチャー

欧州委員がEU予算の英リベート制を批判、「正当性を失った」

この記事の要約

欧州委員会のヤヌシュ・レヴァンドフスキ委員(予算担当)がこのほど、EU予算で英国に限って分担金の一部を払い戻すリベート制が導入されていることに批判的な見解を表明し、同制度の死守をもくろむ英政府が警戒感を強めている。\ リ […]

欧州委員会のヤヌシュ・レヴァンドフスキ委員(予算担当)がこのほど、EU予算で英国に限って分担金の一部を払い戻すリベート制が導入されていることに批判的な見解を表明し、同制度の死守をもくろむ英政府が警戒感を強めている。

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リベート制は1984年、当時の英サッチャー政権の要求によって導入された。英国はEU予算の拠出額が大きい割に、最大の歳出項目である農業補助金の受取額が少なく、しかも当時の英国は国民所得(1人あたり)がEU平均を下回っていたことから特別に認められたものだ。

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同制度をめぐっては、導入当時と比べて英国の国力が増し、EU予算に占める農業補助金の割合が低下していることから、フランスなどから不公平として廃止を求める声が上がっており、2005年に行われた現行中期予算(対象期間:2007~13年)をめぐる協議では、リベート制廃止を主張するフランスと、同国が最大の受益国となっている農業補助金の削減が先決とする英国が激しく対立した経緯がある。来年に本格化する次期中期予算(対象期間:2014~20年)でも、同問題が大きな焦点となるのが確実視されている。

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レヴァンドフスキ委員は6日付の独経済紙『ハンデルスブラット』が掲載したインタビュー記事で、フランスなどリベート制廃止派の主張に沿って、英国の1人あたり所得が制度導入当時から大幅に増えていることなどに言及し、「リベート制は正当性を失った」とコメントした。同委員の報道官は発言内容について「委員の個人的意見であり、欧州委の見解ではない」と火消しに努めたが、英政府は敏感に反応。英財務省は「リベート制がなくなれば、国民所得に占めるEU予算負担の割合はフランスの2倍に達する」と反論し、次期中期予算をめぐる協議でリベート制廃止に徹底抗戦する構えをみせている。

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