2010/9/20

総合 –EUウオッチャー

ロマ送還問題でEUと仏政府の対立激化、欧州委は法的措置を検討

この記事の要約

フランス政府による少数民族ロマの国外送還をめぐり、EUと仏政府の対立が激化している。16日の首脳会議はEUの対アジア外交が主要テーマだったが、急きょロマ送還が議題に取り上げられ、サルコジ大統領と欧州委員会のバローゾ委員長 […]

フランス政府による少数民族ロマの国外送還をめぐり、EUと仏政府の対立が激化している。16日の首脳会議はEUの対アジア外交が主要テーマだったが、急きょロマ送還が議題に取り上げられ、サルコジ大統領と欧州委員会のバローゾ委員長の間で激しいやり取りがあったもよう。欧州委は仏政府の対応が移動の自由や人種差別禁止を定めたEU法に違反するとの見方を強め、法的措置を検討しているが、サルコジ大統領は会議後の記者会見で、違法キャンプの撤去を継続する方針を表明。欧州委からEU法違反と認定された場合も送還政策を変更する考えはないとみられ、事態収拾の兆しは見えていない。

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欧州委と仏政府の対立が先鋭化したきっかけは、警察当局にロマの違法キャンプを優先的に撤去するよう命じた内務省の文書。ロマ支援団体が入手した8月5日付の文書には「3カ月以内に国内300カ所のキャンプや不法居住地を撤去しなければならないが、ロマのキャンプが最優先される」と明記されており、送還措置は「ロマを標的したものではない」とする従来の主張と矛盾する内容だ。

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欧州委はそれまで仏政府のロマ対応について合法性の判断を差し控えていたが、レディング副委員長(司法・基本権・市民権担当)は同文書の発覚を受けて14日、ロマの国外送還は移動の自由を定めたEU法に違反する可能性が高いとの見解を表明。近く合法性に関する最終判断を下したうえで、法的措置を検討する方針を明らかにした。さらに同氏は「第2次大戦後の欧州で、少数民族だという理由だけでEU市民が加盟国から国外退去を命じられる光景を目にすることになるとは思ってみなかった」と指摘。「加盟国はEUの基本的価値観やEU法を揺るがすような行動をとってはならない」と強調し、「仏政府に対する法的手続きに入らざるを得ないと思う」と述べた。

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サルコジ大統領は首脳会議後の会見で、レディング氏の発言は仏政府の政策をナチスによるユダヤ人弾圧になぞらえたものだと批判し、「深くショックを受けた。国家元首としてフランスの立場を守る義務がある」と語気を強めた。これに対してバローゾ委員長は、サルコジ大統領の攻撃を「無用なレトリックあるいは不必要な論争」と一蹴。「欧州委はEUの法の番人として、少数民族に対する差別を容認することはできない」と述べ、仏政府の措置はEU法に違反するとの認識を改めて示した。

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