2010/9/27

総合 –EUウオッチャー

天然ガス安定供給に向けた新法案、欧州議会が可決

この記事の要約

欧州議会は21日の本会議で、EU域内における天然ガスの安定供給確保を目的とする新たな法案を賛成多数で可決した。非常時でも域内のすべての家庭に十分なガスが行き届くよう、域外からのガス供給が長期にわたって停止したり、輸送施設 […]

欧州議会は21日の本会議で、EU域内における天然ガスの安定供給確保を目的とする新たな法案を賛成多数で可決した。非常時でも域内のすべての家庭に十分なガスが行き届くよう、域外からのガス供給が長期にわたって停止したり、輸送施設にトラブルが生じて供給に支障が出た場合などに備え、加盟国がそれぞれ緊急時の対応策を用意することや、各国がガスの備蓄や供給量に関する情報を共有して相互に融通できる体制を整えることなどが柱。法案は10月初めの閣僚理事会で正式に承認される見通しだ。

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EUはガス需要の6割程度を輸入に頼り、そのうち約4割をロシア産が占めている。2008年1月にはロシアがウクライナの料金滞納を理由に、同国経由の欧州向けガス供給を停止し、東欧諸国を中心に深刻な影響が出た。ロシア側はウクライナの支払い能力の問題が解消されない限り、欧州向けガスの安定供給は保証できないとの立場を鮮明にしているため、資源外交を強めるロシアへの依存度を低減し、エネルギー安全保障を長期的に担保するための具体策として、欧州委員会が昨年7月に法案を打ち出した。

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法案によると、加盟国は2年以内に「緊急対応計画」の策定が義務付けられ、域外からのガス供給が停止したり、国内のガス輸送網に重大なトラブルが生じるなど、不測の事態に陥った場合でも、大寒波などによる「例外的に高いガス需要」(統計上、約20年に1度の割合でこうした事態が発生している)に際してすべての家庭に安定的にガスを供給できる体制を整えることが求められる。加盟国は新ルール導入から4年以内にこうした基準を満たさなければならず、国境を越える供給網に関しては3年以内の実現が義務付けられる。

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一連の予防的措置にもかかわらず、国内のガス供給に重大な問題が発生した場合、加盟国は非常事態を宣言して速やかに緊急対応計画を発動し、近隣諸国の備蓄施設やガス輸送網にアクセスして必要な供給量を確保する。さらに非常事態を宣言した加盟国のうち、2カ国以上から要請があった場合、欧州委はEU全体としての非常事態を宣言し、加盟国が協力してガス不足に陥っている国への供給を行う。このほか厳冬期に域外からのガス供給が最大60日間停止しても市民生活や経済活動を維持できるよう、2015年までにEU全体で備蓄量を現在の2倍に拡大することなどが法案に盛り込まれている。

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