2010/10/4

総合 –EUウオッチャー

欧州委が財政規律協定の改革案発表、違反国への制裁発動容易に

この記事の要約

欧州委員会は9月29日、ギリシャ危機の再発防止策の一環として、EUの財政規律を定めた安定成長協定の改革案を発表した。規律違反国への制裁強化を柱とする内容。ギリシャ危機がユーロの信用を揺るがす事態に発展したことを受け、ユー […]

欧州委員会は9月29日、ギリシャ危機の再発防止策の一環として、EUの財政規律を定めた安定成長協定の改革案を発表した。規律違反国への制裁強化を柱とする内容。ギリシャ危機がユーロの信用を揺るがす事態に発展したことを受け、ユーロを導入してから初の抜本的な協定改定に踏み切る。2011年半ばの新ルール導入を目指す。

\

安定成長協定では、EU加盟国に財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることを義務付けており、ユーロ参加国が協定に違反した場合の制裁規定もすでにある。しかし、制裁発動には複雑な手続きを要することなどから、これまで一度も適用されたことはない。こうした甘い体質もあって、ギリシャをはじめとするユーロ圏諸国の大部分が協定に違反する状態となっている。

\

欧州委が今回発表した改革案は、6月末にまとめた原案をたたき台に、ファンロンパイEU大統領を座長とする作業部会が具体化した案に肉付けしたもの。制裁に関しては、財政赤字がGDP比3%を超え、制裁が必要と欧州委が判断した国に対してGDPの0.2%に相当する額を無利子で積み立てさせ、赤字を是正しなければ積立金をEUが没収する。没収された積立金は、協定に違反していない国に分配する。また、債務残高がGDP比60%を超えてはならないとする規定に違反した場合も制裁対象とし、3年間で毎年5ポイントずつ削減することを命じる。さらに、新たな順守規定として、各国の単年の歳出増加率がGDP伸び率を超えてはならないというルールも盛り込んだ。

\

制裁発動の手続きも変更する。欧州委が制裁を勧告した場合、加盟国が多数決で反対しない限り発動が決まるという「逆多数決」方式を採用。これにより協定違反国には自動的に近い形で制裁が科されるようになる。

\

さらに欧州委は、EU加盟国間の経済収支などマクロ経済面での不均衡を是正するための方策も提案。経常収支、実効為替レート、民間債務、労働コストなどの指標を組み合わせた「スコアボード」をまとめ、これ基づいて改善が必要と判断した国に「過剰不均衡是正手続き」を発動する。同措置に基づく是正命令に従わなかったユーロ参加国に対しては制裁として、GDPの1%に相当する制裁金を科す。EUでは現在、財政赤字が上限を超えた国に「過剰赤字是正手続き」を発動しているが、新ルールではマクロ経済指標にも踏み込んで監視の目を強め、各国間の不均衡是正を図る。

\

欧州委案の成立には加盟国と欧州議会の承認が必要。同案をめぐっては、協定違反への制裁強化そのものについては各国が同意しているものの、ほぼ自動的に制裁が発動されることにフランスなど一部の国が抵抗しており、協議が紛糾する可能性もある。

\