2010/10/4

産業・貿易

アイルランドが銀行に追加支援、最大171億ユーロ投入

この記事の要約

アイルランド政府は9月30日、経営難に陥っている同国の銀行への追加支援策を発表した。昨年1月に国有化したアングロ・アイリッシュ銀行への資本注入や、アライド・アイリッシュ銀行の過半数株を取得して国有化することなどが柱で、新 […]

アイルランド政府は9月30日、経営難に陥っている同国の銀行への追加支援策を発表した。昨年1月に国有化したアングロ・アイリッシュ銀行への資本注入や、アライド・アイリッシュ銀行の過半数株を取得して国有化することなどが柱で、新たに最大171億ユーロの公的資金が投入される。追加的措置により、国内総生産(GDP)に対する2010年の財政赤字の比率は当初予想の12%から32%に上昇する見通し。また、金融危機以降の銀行救済費用は最大500億ユーロに膨らみ、GDPのおよそ3分の1に達する可能性がある。

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アイルランド中央銀行の試算によると、アングロ銀が必要とする資本は総額293億ユーロに上り、新たに64億ユーロの資本注入が必要となる。ただし、今後10年間に不動産価格が2007年のピーク時より65%低い水準で推移する「最悪のシナリオ」に陥った場合、さらに50億ユーロの追加支援が必要。政府は同行に対してこれまでに229 億ユーロの資本注入を行っている。一方、アライド銀はすでに35億ユーロの公的支援を受けているが、さらに最大30億ユーロ資本が必要となる見通し。政府は同行が自力で資金調達するのは不可能と判断し、過半数株を取得する方針を打ち出した。市場関係者の間では、同行に対する政府の持ち株比率が最終的に90%を超えるとの見方が出ている。中銀はさらに、住宅貯蓄組合のアイリッシュ・ネーションワイド・ビルディング・ソサエティーに対しても27億ユーロの追加支援が必要と見積もっている。

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アイルランド政府は銀行セクターに対してこれまでに総額330億ユーロの公的資金を投入している。同国はEUの「安定成長協定」に沿って2014年までに財政赤字の対GDP比を3%以内に抑える目標を掲げているが、主要銀行への追加支援策で財政支出が大幅に拡大することになる。このためレニハン財務相はただちに来年以降の予算を見直し、11月に向こう4年間の中期財政計画を公表する方針を明らかにした。

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一方、アイルランド中銀のホノハン総裁は追加支援策の発表後、RTEラジオとのインタビューで、銀行システムの再建コストは膨大な額に上るものの、ユーロ導入国が財政危機に陥った場合に備えたEU基金などの外部支援は必要ではないとの認識を示した。

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