2010/10/4

競争法

伊エニに対する調査打ち切り、パイプライン権益売却で制裁回避

この記事の要約

欧州委員会は9月29日、伊エネルギー大手エニが競争法違反に対する制裁措置を回避するために提示した改善策を受け入れ、同社に対する調査を打ち切ったと発表した。エニは欧州委との合意に基づき、ロシアや北海から欧州諸国を経由してイ […]

欧州委員会は9月29日、伊エネルギー大手エニが競争法違反に対する制裁措置を回避するために提示した改善策を受け入れ、同社に対する調査を打ち切ったと発表した。エニは欧州委との合意に基づき、ロシアや北海から欧州諸国を経由してイタリア北部に天然ガスを運ぶ3本のパイプラインの権益を売却し、国内外のガス輸送網を他社に開放する。

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EU域内では2007年7月に電力・ガス市場が自由化されたが、その後も多くの国で実質的な独占または寡占状態が続いており、欧州委は域内の主要な電力・ガス会社に対する調査を進めている。エニに関しては、ガス輸送分野における独占的地位を利用して他社がパイプラインを利用できないようにし、競争を阻害した疑いがあるとして07年に本格調査に着手。ロシア産天然ガスをイタリアに運ぶパイプラインに他社がアクセスするのを不当に制限したうえ、ライバルが競争力をつけるのを阻止するため、パイプラインへの投資を意図的に制限しようとしたとの見解をまとめ、09年3月に同社に対して異議告知書を送付していた。

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欧州委によると、エニはオーストリア経由でロシア産ガスをイタリアに運ぶトランス・オーストリア・ガス(TAG)、北海からオランダ、ドイツ、スイスを経由するTENPとトランジットガスの3本について、一定期間内に同社が保有する権益を第3者に売却する。TAGに関しては伊国営金融機関カッサ・デポジーティ・エ・プレスティーティ(CDP)への売却が有力。エニは取引相手や条件について事前に欧州委の承認を得る必要がある。

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欧州委のアルムニア副委員長(競争政策担当)は「ガス市場を統合して競争を促進し、EU全体で天然ガスの安定供給を図るうえでインフラへのアクセスが重要な鍵を握る。エニが公約を実現することでイタリア向けガス輸送の独占状態が解消され、適正な投資が促進されると判断した」と説明している。

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域内の大手エネルギー企業に対する競争法上の調査をめぐっては、独RWE、エーオン、仏GDFスエズなどが相次いで資産売却や顧客との契約条件の見直しなどの改善策を打ち出し、欧州委の制裁を回避している。

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