2010/10/11

産業・貿易

欧州委が「金融活動税」提案、金融取引税より「好ましい」

この記事の要約

欧州委員会は7日、EU内の金融機関の利益、報酬に課税する「金融活動税(Financial Activities Tax=FAT)」を導入する構想を提案した。すでにEUではトービン税と呼ばれる国際金融取引税(Financi […]

欧州委員会は7日、EU内の金融機関の利益、報酬に課税する「金融活動税(Financial Activities Tax=FAT)」を導入する構想を提案した。すでにEUではトービン税と呼ばれる国際金融取引税(Financial Transaction Tax=FTT)構想も浮上しているが、国際的に導入しないとEUが不利になるため、「FATの方が好ましい」としている。EUは19日の財務相理事会で同提案について検討する。

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FAT による税収の用途は未定だが、欧州委は財政危機に直面する各国の新たな財源とすることや、金融安定化に活用することを想定しているもよう。税率など詳細も決まっていないが、試算では5%の税率で年250億ユーロの税収が見込めるという。

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リーマンショックに端を発した世界的な金融危機で域内銀行に巨額の公的資金注入を迫られたEUは、新たな危機の再発に備え、域内の金融機関に銀行税を課し、将来の破たんに備えた基金を創設する案が浮上しているが、今回の構想はこれとは別だ。

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一方、FTTは株式や債券、外国為替などの取引に課税するもので、投機的な取引を抑えるほか、税収を環境対策や途上国支援などに活用することを目的としている。欧州委の試算では、金融取引に0.1%を課税する場合、税収は年600億ユーロに上る。ドイツの提唱で9月のEU臨時首脳会議で協議されたが、EUだけで導入すると資金や金融取引が域外に流出するとの意見が多く、棚上げとなっている。

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欧州委は金融危機の元凶となった金融機関が巨額の公的救済を受けながら、納税額が少なく、金融機関は付加価値税(VAT)を大部分免除されていることなどから、金融機関に対する何らかの新税が必要という考え。FTTについても11月の20カ国・地域(G20)首脳会議で提案し、各国の賛同を求める方針だが、反対論が噴出するのは確実。このため、EU単独で導入する新税は「FATがベストの選択肢」としている。シェメタ委員(税制担当)は、FATの方がFTTより金融機関の負担が少なく、海外流出のリスクが小さいことも利点として挙げた。

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欧州委は10月末の首脳会議を経て調整を進め、2011年に詳細な案を提示する計画。ただ、税制に関する新ルール導入やルール改正には加盟国の全会一致での承認が必要で、協議の難航が予想される。

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