2010/11/8

総合 –EUウオッチャー

英仏が軍事協力条約に署名、国防費削減など狙い

この記事の要約

英国のキャメロン首相と仏サルコジ大統領は2日、通常兵力および核兵器に関する2つの軍事協力条約に署名した。両国ともに金融危機の影響で緊縮財政を強いられ、国防費の削減が不可欠な現状を踏まえ、かつての軍事的ライバルとの「歴史的 […]

英国のキャメロン首相と仏サルコジ大統領は2日、通常兵力および核兵器に関する2つの軍事協力条約に署名した。両国ともに金融危機の影響で緊縮財政を強いられ、国防費の削減が不可欠な現状を踏まえ、かつての軍事的ライバルとの「歴史的」合意に踏み切った。また、変化の激しい国際情勢や、国際テロ、サイバー攻撃などといった新たな脅威に対応し、軍事分野における国際的影響力を維持するためには、相互の協力が欠かせないと判断したもよう。ただし、今回締結した条約は、両国の協力関係を大幅に強化させる一方、単独での軍事行動を妨げるものにはならないという。

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通常兵力に関して両国は、2020年以降、双方の航空母艦を共同運用することで合意した。それぞれが1隻ずつの空母を運用し、一方が修繕を必要とする際には他方が任務を支援するなど、補完的に運用する。また、空母を改修し、双方の空母から互いの戦闘機を発着可能にする。そのほか、来年の訓練開始をメドに、共同海外派遣部隊を創設。兵員総勢5,000人ずつからなる陸海空の即応部隊を整備する。ただし、部隊の運用については両国ともに拒否権を維持し、運用方法は「統合」ではなく「協力」にとどめる。このほか合意したのは◇次世代無人偵察機(ドローン)および無人戦闘機の共同開発◇両国が購入予定のエアバスA400M輸送機の共同メンテナンスおよび訓練◇潜水艦部品の共同生産◇ミサイルの共同調達に関する戦略的10カ年計画の策定――など。

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一方、核兵器については、2015年までに核弾頭の安全性維持を目的とした施設の共同利用を開始することで同意した。具体的には◇英国南部アルダーマストンにある核兵器研究のための施設を共同の技術開発センターとして利用◇実験施設を仏東部ブルゴーニュ地方のバルデュクに置き、両国が共用する――という内容。ただし、核弾頭と秘密情報の共有はせず、双方ともに独立性を維持する方針だ。両国はともに包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准していることから、核爆発を生じない臨界前核実験を通して核兵器開発を進めることになる。

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英国は先月、年間370億ポンド(590億ドル)に上る防衛予算を向こう4年間で8%削減する計画を発表。兵員1万7,000人の削減と戦闘部隊の縮小、空母1隻の退官の方針を明らかにしている。一方のフランスは、来年の防衛予算を302億ユーロと(424億ドル)している。

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