2010/11/15

産業・貿易

欧州委が新通商戦略を発表、アジアとの貿易拡大など柱

この記事の要約

欧州委員会は9日、向こう5年間の通商政策の指針となる新戦略を発表した。世界貿易機関(WTO)多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の早期妥結を目指す一方、インドなど新興国との自由貿易協定(FTA)の締結交渉を加速させることな […]

欧州委員会は9日、向こう5年間の通商政策の指針となる新戦略を発表した。世界貿易機関(WTO)多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の早期妥結を目指す一方、インドなど新興国との自由貿易協定(FTA)の締結交渉を加速させることなどが柱。政府調達などで国内企業を優先する中国の慣行を念頭に、EU企業の参入を不当に排除している国の企業に対し、相応の対抗措置を講じる方針も盛り込んだ。

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欧州委は貿易の拡大が経済成長と雇用創出につながり、消費者の選択肢を増やすことにもなると指摘。経済危機からの回復を促し、成長に向けた環境づくりを進めることが通商戦略の狙いと説明している。

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「貿易、成長、世界情勢」と題した23ページから成る戦略文書は、欧州経済に悪影響を及ぼす保護主義に強く反対する立場を強調。ドーハ・ラウンドの締結を最優先課題と位置づけ、遅くとも2011年末までの妥結を目指す方針を改めて示した。そのうえで、今後は市場拡大の見込める新興国とのFTAを推進する立場を明確にし、インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国などとの交渉を加速させるとしている。

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一方、欧州委は中国における政府調達でEU企業が不当に入札から排除されている現状を踏まえ、こうした市場開放が進んでいない国の企業をEU域内での入札から排除するなどの対抗措置を検討する必要があると指摘。「相互主義に基づく市場へのアクセスを確保」するため、11年中に法案をまとめる意向を示している。欧州委のデフフト委員(通商担当)は会見で「市場開放度がEUのレベルに達していない場合は不均衡を是正する必要がある」と語った。ただし「あからさまに政府調達市場を閉ざすことは良い方法とはいえない」と述べ、対抗措置は「分野を特定した緩やかな」内容でなければならないと説明した。

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戦略文書はこのほか、中国によるレアアース(希土類)の輸出制限などを念頭に、鉱物資源やエネルギー資源などの囲い込みに対する防衛策として、WTOへの提訴を含めた国際ルールに基づく対応を継続すると警告している。また日本、米国、ロシアなど「戦略的パートナー」との関係については、非関税障壁の除去が連携強化の前提になると強調し、相手国により一段の対応を求めている。

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