2010/11/15

産業・貿易

「EU特許」使用言語で溝埋まらず、一部加盟国による先行導入も視野に

この記事の要約

EU加盟国は10日、ブリュッセルで産業担当相理事会を開き、EU共通の単一特許制度の創設について協議したが、使用言語をめぐって調整がつかず、交渉は不調に終わった。欧州委員会は特許出願にかかる翻訳費用を最小限に抑えるため、域 […]

EU加盟国は10日、ブリュッセルで産業担当相理事会を開き、EU共通の単一特許制度の創設について協議したが、使用言語をめぐって調整がつかず、交渉は不調に終わった。欧州委員会は特許出願にかかる翻訳費用を最小限に抑えるため、域内全域で有効な「EU特許」の創設に合わせて英・仏・独語のうち1つの言語だけで出願できる仕組みの導入を提案している。加盟国の大半は同案を支持しているが、スペインとイタリアは自国言語が選択肢から除外されることに強く反発している。欧州委が目指す年内の合意は難しい情勢だが、英国などは一部の加盟国が特定分野で先行的に統合を進める「強化協力(enhanced cooperation)」の適用を提案しているもよう。今後は重要案件における全会一致の原則に基づき妥協点を模索する一方で、3言語体制を支持する国によるEU特許の先行導入に向けた動きが本格化する可能性がある。

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欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は会議後の会見で「残念ながら今回も妥協点を見出すことはできなかった。一連の協議の失敗が深刻な結果を招くということを強調したい。単一特許制度を創設できなければEU経済の競争力が弱まり、技術革新と研究・開発に重大な影響が出る。厳しい経済状況が続く中でこれは誤ったシグナルだ」と警告した。

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外交筋によると、英国、オランダ、スウェーデンなど5カ国は欧州委に書簡を送り、強化協力の枠組みでEU特許を先行導入することが可能かどうか調査するよう要請したもよう。EU基本条約によると、有志による先行統合では少なくとも9カ国の参加が条件となる。

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域内の複数の国で特許を取得する場合、現在は各国の言語に出願資料を翻訳する必要がある。欧州委案によると、域内の13カ国で特許を取得するために必要な費用は合計2万ユーロに上り、このうち翻訳費用が約7割を占める。これに対し、共通特許制度が導入されて1言語による出願・審査が可能になれば、翻訳費用は700ユーロ程度に抑えられ、EU特許の登録費用は6,200ユーロ以下に収まると試算している。

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