2010/11/29

産業・貿易

欧州委、銀行ストレステストで流動性も審査対象に追加か

この記事の要約

欧州委員会はアイルランドの財政・金融危機を受けて、EU域内の銀行を対象とするストレステスト(健全性審査)に流動性の基準を盛り込む方向で検討を進めているもようだ。複数のメディアがEU関係者の話として報じた。欧州委は欧州銀行 […]

欧州委員会はアイルランドの財政・金融危機を受けて、EU域内の銀行を対象とするストレステスト(健全性審査)に流動性の基準を盛り込む方向で検討を進めているもようだ。複数のメディアがEU関係者の話として報じた。欧州委は欧州銀行監督者委員会(CEBS)に対し、早ければ来年上半期に実施される次回のストレステストで新たに流動性を審査項目に加えるよう求めているという。EU加盟国は定期的にストレステストを実施し、結果をすべて公表することで合意しているが、一部の国は欧州委の提案に強い難色を示しているとされ、調整は難航しそうだ。

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今夏に実施されたストレステストでは「不合格」となった銀行が91行中、7行にとどまり、アイルランドの銀行はいずれも審査をパスしていた。しかし、同テストでは株価や国債相場が予想外に下落するなど厳しい市場環境に陥った場合、損失を吸収できる十分な資本水準を確保しているかどうかに重点が置かれ、流動性不足に伴うリスクは考慮されていなかった。市場では当初から査定基準の甘さを指摘する声が上がっていたが、その後バンク・オブ・アイルランドやアライド・アイリッシュなどアイルランドの主要行が相次いで深刻な資本不足に陥った事態を受け、欧州委は審査基準を厳格化してストレステストの透明性を高めることが信用不安の緩和に不可欠と判断したもようだ。

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一連の報道を受け、CEBSの報道官は次回のストレステストに向けて審査基準の見直しを進めていることを認めたが、具体的な検討内容や実施時期についてはコメントを拒否した。一方、銀行側は流動性を加味する構想を概ね支持しているもようだが、一部加盟国の銀行当局は評価方法が複雑で比較が難しいことなどを理由に難色を示しているとされる。

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アイルランドの金融危機を受け、市場では前回のストレステストで合格と認定されたポルトガルやスペインなどの銀行が深刻な資金難に陥り、欧州中央銀行(ECB)による資金供給への依存度がさらに高まるとの懸念が広がっている。こうしたなか、スペイン中央銀行は国内の銀行に対し、流動性に関する詳細情報を定期的に提供するよう求めているもようで、地元有力紙エル・ムンドは中銀から週1回の報告を義務づけられた銀行もあると報じている。

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