2010/11/29

環境・通信・その他

排出量取引クレジットに「質的制限」、一部産業用ガスは除外の可能性も

この記事の要約

欧州委員会は25日、京都議定書が規定するクリーン開発メカニズム(CDM)と共同実施(JI)を通じて取得したクレジットをEU排出量取引制度(EU-ETS)で利用する際の規制を強化する方針を打ち出した。EU-ETSの第3期が […]

欧州委員会は25日、京都議定書が規定するクリーン開発メカニズム(CDM)と共同実施(JI)を通じて取得したクレジットをEU排出量取引制度(EU-ETS)で利用する際の規制を強化する方針を打ち出した。EU-ETSの第3期がスタートする2013年以降、CDMおよびJIプロジェクトの「質」に応じてクレジットの利用を厳しく制限するという内容。産業用ガスのうち特に温室効果が高いHFC-23と亜酸化窒素(N2O)の回収・分解事業を通じて取得したクレジットをEU-ETSの削減実績に組み入れたり、市場での取引を禁止することを提案している。12月15日に開かれる加盟国の代表による気候変動委員会で協議を行い、その後、欧州議会で検討に入る。

\

京都メカニズムのうち特にCDMをめぐっては、先進国が温室効果ガスの排出削減目標を達成するための安価な方法としての側面が重視され、開発途上国の持続的な発展に寄与するというもう1つの目的は十分に反映されていないのが現状。たとえば代替フロン「HCFC-22」の製造過程で排出される「HFC-23」の回収・分解事業がCDM プロジェクトに認定された場合、HFC-23は二酸化炭素(CO2)に比べて1万1,700倍の温室効果があるため、CO2換算で大量の排出権クレジットが発行されることになる。事業者は取得した排出権を売却して多額の収入を得ることができるため、中国などに相次いで大規模工場が新設され、不必要にHCFC-22が増産されるといった現象が起きている。このため環境団体などからは事業の内容に応じて発行するクレジットの量を調整すべきだとの意見が出ている。

\

京都議定書の約束期間が終了する2013年以降の枠組みにおけるCDMの改革議論が本格化するなか、欧州委のヘデゴー委員(気候変動担当)は8月、代替フロンをはじめとする産業用ガスの製造プロジェクトを通じて取得したCDMクレジットをEU-ETSで利用する際に、新たな「質的制限」を加える必要があるとの考えを表明。産業界からはこれを受け、13年以降のCDMプロジェクトへの投資計画を策定するためにも、早急にEU-ETSでの利用が制限されるクレジットの要件を明確にするよう求める声が高まっていた。

\

欧州委によると、CDMプロジェクトのうちHFC-23とN2Oの削減事業はそれぞれ約8割、6割が中国に集中しており、残りのほとんどはインドで実施されている。また、HFC-23関連のプロジェクトがCDMおよびJI事業に占める割合は件数ベースで1%に満たないが、これまでに発行されたクレジットの量では全体の69%を占めている。欧州委は第3期EU-ETSでHFC-23とN2Oに対する規制を導入した場合でも、それ以外のおよそ2,300件のCDM/JIプロジェクトを通じて十分なクレジットが確保できるため、排出権価格への影響は限定的との見通しを示している。

\