2010/12/6

総合 –EUウオッチャー

ECBが資金供給措置を延長、信用不安で「出口戦略」後退

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は2日にフランクフルトで開いた定例政策理事会で、金融市場に資金を無制限供給する措置の延長を決めた。アイルランドなどの信用不安で市場が動揺していることを受けたもの。トリシェ総裁は前月、景気は基本的に回 […]

欧州中央銀行(ECB)は2日にフランクフルトで開いた定例政策理事会で、金融市場に資金を無制限供給する措置の延長を決めた。アイルランドなどの信用不安で市場が動揺していることを受けたもの。トリシェ総裁は前月、景気は基本的に回復基調にあるとして、12月の理事会で資金供給の縮小を検討する意向を示していたが、信用不安の再燃により方針転換を迫られ、金融危機対策で導入した非常時の金融政策を元に戻す「出口戦略」は後退することになった。

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同日の理事会では、ユーロ圏16カ国に適用される最重要政策金利を現行の年1.0%に据え置くことを決めた。金利据え置きは19カ月連続。

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ECBは来年1月までとしていた1週間物資金を低利の固定金利で無制限に供給する措置を少なくとも4月12日まで継続することを決定。また、1月までとしていた1カ月物資金、今年12月末までとしていた3カ月物資金の無制限供給については、少なくとも来年3月末まで続ける。

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EUは11月28日、ギリシャに続いて深刻な信用不安に陥ったアイルランドに、国際通貨基金(IMF)と共同で総額850億ユーロの緊急融資を実施することを決めた。これにより信用不安がポルトガル、スペインなど他の財政悪化国に波及するのを阻止したい考えだったが、市場の不安は解消せず、スペイン、イタリアなどの国債利回りは週明けに上昇した。ECBはこうした国々の金融機関を支えるため、潤沢な資金供給の継続に舵を切った。

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市場ではECBが資金供給の延長と同時に、5月に開始したユーロ圏諸国の国債の買い取る措置の拡大を打ち出すと期待していた。これについてトリシェ総裁は理事会後の記者会見で、買い取り規模拡大は明言しなかったものの、「国債買い取りを続ける」と述べ、アイルランド、ポルトガルなどの国債を引き続き買い支えていく姿勢を示した。これを受けて両国の国債利回りは同日に急低下した。

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一方、ECBは同日、最新の内部経済予測を公表。ユーロ圏の今年の予想成長率を1.7%とし、前回(9月)の1.6%から上方修正。2011年については前回と同水準の1.4%に据え置いた。初公表となる2012年の予想値は1.7%となった。

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