2010/12/13

総合 –EUウオッチャー

対アイルランド緊急融資を正式決定=EU財務相理

この記事の要約

EU加盟国は7日にブリュッセルで開いた財務相理事会で、信用不安に陥っているアイルランドに国際通貨基金(IMF)と共同で総額850億ユーロの緊急融資を実施することを正式決定した。一方、アイルランド支援に投入される総額7,5 […]

EU加盟国は7日にブリュッセルで開いた財務相理事会で、信用不安に陥っているアイルランドに国際通貨基金(IMF)と共同で総額850億ユーロの緊急融資を実施することを正式決定した。一方、アイルランド支援に投入される総額7,500億ユーロのユーロ防衛基金を増額する案については決定を見送った。

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融資850億ユーロのうち350億ユーロは銀行再建に活用する。うち100億ユーロは資本増強に投入、250億ユーロは追加支援が必要となった場合に備えた基金とする。残る500億ユーロは財政赤字の穴埋めに使う。融資期間は7年半。

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ユーロ防衛基金からの拠出は675億ユーロ。EUが450億ユーロ、IMFが225億ユーロを負担する。残る175億ユーロはアイルランドが公的年金積み立て基金などから拠出する。

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融資実行の条件となるのは、◇国内金融システムの再建◇成長強化に向けた改革◇財政赤字を2015年までにEU財政規律で上限となっているGDP比3%を下回る水準まで削減――の3つ。赤字削減期限は当初の2014年から1年の延長が認められた格好となる。

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アイルランド政府は融資の条件である赤字削減に向け、11月24日に向こう4年間の財政再建計画を発表。歳出削減、増税により2011~14年に財政赤字を総額150億ユーロ削減する方針を打ち出した。7日には、その一環として60億ユーロの歳出削減、増税を盛り込んだ2011年度の緊縮予算案が議会で可決された。

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融資枠増額、独など反対

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総額7,500億ユーロのユーロ防衛基金を増額する案は、ギリシャ、アイルランドに続いて財政悪化が深刻なポルトガル、スペインなどが緊急融資を要請する場合を想定したもので、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁、EU議長国ベルギーのレインデルス財務相が提唱していた。あらかじめ基金を拡大しておくことで市場の不安を鎮めるという予防的措置の意味合いがある。しかし、理事会ではドイツなどが反対し、合意に至らなかった。ECBがこのところポルトガルなどの国債買い取りを加速させ、前週の買い取り額が19億ユーロを超えたことで市場の不安が緩和され、ポルトガル、スペインの国債利回り拡大に歯止めがかかっていることから、増額は不要との結論に達した。ただ、6日のユーロ圏財務相理事会の議長を務めたルクセンブルクのユンケル首相兼財務相は、増額について「現時点では」不要としており、状況の変化によって増額論が再浮上する可能性も捨てきれない。

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銀行ストレステスト、流動性も審査

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一方、同日の理事会では、EU域内の銀行を対象とするストレステスト(健全性審査)を来年も実施し、新たに流動性を審査項目に加えることを決めた。

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今夏に実施されたストレステストでは「不合格」となった銀行が91行中7行にとどまり、アイルランドの銀行はいずれも審査をパスしていた。しかし、同テストでは株価や国債相場が予想外に下落するなど厳しい市場環境に陥った場合、損失を吸収できる十分な資本水準を確保しているかどうかに重点が置かれ、流動性不足に伴うリスクは考慮されていなかった。このため、2月に行われる次回のテストでは、流動性も厳しくチェックする。

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