2010/12/13

総合 –EUウオッチャー

産休延長問題の決着持ち越し、加盟国が欧州議会の修正案を否決

この記事の要約

EU加盟国は6日に開いた雇用担当相理事会で、女性労働者に与えられる完全有給での法定出産休暇の期間を延長する法案を否決した。欧州議会は産休期間を現在の最低14週間から20週間に延長する法案を可決していたが、ドイツなど大部分 […]

EU加盟国は6日に開いた雇用担当相理事会で、女性労働者に与えられる完全有給での法定出産休暇の期間を延長する法案を否決した。欧州議会は産休期間を現在の最低14週間から20週間に延長する法案を可決していたが、ドイツなど大部分の国が過大なコスト負担を強いられるとして反発し、受け入れを拒んだ。これにより同法案をめぐる問題の決着は来年以降に持ち越しとなった。

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問題となっているのは、EUが1992年に採択した「妊娠中または最近出産した労働者の安全及び健康の改善を促進するための指令」の改正案。域内の女性労働者は産前・産後に連続する14週間の出産休暇を取得する権利を有するという現行規定に対して、欧州委員会がまとめた改正案は、法定産休期間を国際労働機関(ILO)の勧告に沿って最低18週間とし、休暇中の全期間にわたって給与の100%支給を義務付けるという内容。これに対して欧州議会は10月、産休期間を欧州委の原案より長い20週間に延長する修正案を可決した。

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この修正案をめぐっては、当初から加盟国や経済界が難色を示していた。企業の経営環境が依然として厳しく、加盟国の財政もひっ迫している中で、大きなコスト負担に耐えられないという理由だ。理事会では予想通り、主要国であるドイツ、フランス、英国を含む大多数の国が反対に回った。

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議長国ベルギーのミルケ雇用相は理事会後の記者会見で、「極めて大多数の国が、給与100%支給の産休を20週間に拡大するのは余りにも行き過ぎだと考えている。(欧州議会の修正案に)交渉の余地はない」とコメント。独シュレーダー家族相は、同法案が実現すると、同国に年間12億ユーロの追加コストが生じるとした上で「現在の経済状況では、産休延長を受け入れることはできない」と述べた。

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同問題の処理は、来年1月から議長国となるハンガリーの手に委ねられる。産休を18週間とする欧州委の原案を軸に調整を図るとみられる。

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EUでは英国の法定産休期間が52週と最長だが、給与は完全支給でなく、最初の6週間に90%を支給するだけ。一方、ドイツは現行指令の最低基準である14週だが、完全支給となっている。

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