2011/1/17

産業・貿易

アゼルバイジャンがEUにガス供給、「南回廊」構想が前進

この記事の要約

欧州委員会のバローゾ委員長とアゼルバイジャンのアリエフ大統領は13日、同国から欧州向けの天然ガス供給に関する共同宣言に署名した。アゼルバイジャンが欧州向けガス供給を確約するのは初めて。EU側はカスピ海周辺国からロシアを迂 […]

欧州委員会のバローゾ委員長とアゼルバイジャンのアリエフ大統領は13日、同国から欧州向けの天然ガス供給に関する共同宣言に署名した。アゼルバイジャンが欧州向けガス供給を確約するのは初めて。EU側はカスピ海周辺国からロシアを迂回して天然ガスを欧州に輸送する「南回廊(South Corridor)」の構想が大きく前進すると期待を寄せている。

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欧州委によると、アゼルバイジャンはカスピ海沖の天然ガス田「シャーデニス(Shah Deniz)Ⅱ」から、長期にわたり「相当量」のガスを欧州向けに供給することを約束した。EU側はパイプライン建設などで協力する。南回廊ではトルコからブルガリア、ルーマニア、ハンガリーを経由してオーストリアまでの全長3,300キロを結ぶ「ナブッコ・パイプライン」のほか、トルコと南イタリアを結ぶ「ITGI」、ギリシャからアドリア海を経由してイタリアに至る「トランス・アトランティック・パイプライン(TAP)」など、複数のプロジェクトが計画されている。アゼルバイジャンは数カ月以内にどのパイプラインに優先的に天然ガスを供給するか決定する見通しだ。

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バローゾ委員長は声明で「今回の合意に基づき欧州はカスピ海沖の天然ガスに直接アクセスできるようになり、南回廊構想が実現に向けて大きく前進する。この新たなガス供給ルートを通じてエネルギー安全保障が強化される」と述べた。

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EUはガス供給源や輸送ルートの多様化を進めてエネルギー分野におけるロシア依存からの脱却を図ろうとしており、ナブッコ計画をエネルギー戦略の柱の1つと位置づけている。ただ、年間310億立方メートルの輸送能力が見込まれる同パイプラインに対し、シャーデニスⅡの年間生産量は最大で100億立方メートル程度との試算があり、アゼルバイジャンがナブッコより規模の小さいパイプラインを優先的供給先として選定する可能性も指摘されている。EUはカスピ海周辺諸国の中でトルクメニスタンにも欧州向けガス供給を期待しており、バローゾ委員長はアゼルバイジャンに続いて同国首脳とエネルギー問題について協議する意向を示している。

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