2011/1/24

環境・通信・その他

EU排出量取引システムにサイバー攻撃、取引が一停止

この記事の要約

EUは19日、域内の排出量取引システムにハッカーが侵入し、複数の加盟国の排出権を盗んでスポット市場で売却していたことが判明したとして、約1週間にわたり取引を停止すると発表した。2005年のシステムの稼働以来、これほど長く […]

EUは19日、域内の排出量取引システムにハッカーが侵入し、複数の加盟国の排出権を盗んでスポット市場で売却していたことが判明したとして、約1週間にわたり取引を停止すると発表した。2005年のシステムの稼働以来、これほど長く取引を中断するのは初めて。EU は今後、各加盟国との協力のうえで適切な対策を講じ、早急に再開させたい考えだ。

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欧州委員会によると、ハッカーはここ2カ月の間に豪州、ポーランド、ギリシャ、エストニアなど数カ国の排出枠登録システムに侵入、排出枠を盗み出していた。被害額は総額約3,000万ユーロに達するとみられ、チェコだけでも約680万ユーロの排出枠が盗まれたという。こうした事態を受け、ロンドンにある世界最大の排出権市場ICEフューチャーズ・ヨーロッパ、ナスダックOMXグループの欧州商品部門、ブルーネクスト取引所など域内にある排出量取引所は20日から取引を停止。EUは26日からの段階的な取引再開を目指す意向だが、チェコは排出枠登録の受け付けを無期限に停止すると発表しており、先行きは不透明だ。

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システムが犯罪の標的になるのは今回が初めてではなく、欧州委は「一部の加盟国による安全対策に不備があった」と認めている。昨年にもハッカーによる同様の侵入があり、欧州委はセキュリティーの強化を提案していた。

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EU排出量取引制度(EU-ETS)は、温暖化ガスの排出量を取り引きするシステムとしては世界最大の規模。国や企業が排出量に一定の枠を設け、実際の排出量と枠の上限の過不足分を売買する仕組みで、全体的な排出量の抑制を目的としている。

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