2011/2/7

産業・貿易

米政府のボーイング向け補助金は違法、WTOパネルが最終報告

この記事の要約

米航空機大手ボーイングに対する米政府の補助金が世界貿易機関(WTO)協定に違反するとしてEUが提訴している問題で、WTOの紛争処理委員会(パネル)は1月31日、同社への補助金の一部を違法と認定する最終報告をまとめ、EU・ […]

米航空機大手ボーイングに対する米政府の補助金が世界貿易機関(WTO)協定に違反するとしてEUが提訴している問題で、WTOの紛争処理委員会(パネル)は1月31日、同社への補助金の一部を違法と認定する最終報告をまとめ、EU・米の双方に提示した。WTOパネルは昨年9月、ボーイングに対する補助金の違法性を認める中間報告を出しており、最終裁定はこれを追認した形。一方、パネルは昨年6月、欧州航空機大手エアバスに対するEU加盟国の補助金を違法とする裁定を下しており、7年目に入ったEU・米間の航空機補助金をめぐる通商紛争はこれで1勝1敗となった。

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EU側は米国防総省や米航空宇宙局(NASA)などがボーイングの次世代中型旅客機「787」(ドリームライナー)の開発支援を通じ、同社に違法な補助金を提供したと主張していた。最終報告は今春に公表される見通しだが、欧州委員会は同日、EU側の主張が認められたことを歓迎するとの声明を発表。クランシー報道官は「米政府の補助金によって欧州航空機産業が不利益を受けたことがより一層明確になった」と述べた。

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これに対し、ボーイングは声明で「WTOはEU側の主張の大部分を否定した」と指摘。WTOの裁決は同社に商慣行の変更を迫るものではないと強調している。また、米通商代表部(USTR)のマクファーソン報道官も「EUからエアバスへの違法な補助金に比べれば、ボーイングに対する米政府の支援はごく小規模なものだとする米側の主張が認められると確信している」と述べた。昨年6月末に公表されたパネル報告は、エアバスの超大型旅客機「A380」の開発支援を目的としたEU主要国による資金援助のうち、英、独、スペイン政府による超低利融資などがWTO協定に違反すると結論づけ、EU側に是正を勧告していた。

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世界の航空機市場ではボーイングとエアバスが覇権争いを展開しているが、今後は中国やブラジルなど新興国の本格参入によってさらに競争が激化するとみられている。EU・米間の対立について、市場では最終的に双方の話し合いで決着し、航空機産業に対する政府支援の新たな枠組みが構築されるとの見方が出ている。ただ、EUはパネル報告の内容を不服として上級委員会に上訴していることから、米政府も最終報告の公表後に上訴する可能性も指摘されている。

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