2011/3/7

総合 –EUウオッチャー

今年のユーロ圏成長率は1.6%、欧州委が0.1ポイント上方修正

この記事の要約

欧州委員会は1日発表した暫定経済予測で、2011年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)成長率を1.6%とし、前回予測(昨年11月)の1.5%から0.1ポイント上方修正した。世界経済の見通し改善に伴って輸出主導で景気回復が […]

欧州委員会は1日発表した暫定経済予測で、2011年のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)成長率を1.6%とし、前回予測(昨年11月)の1.5%から0.1ポイント上方修正した。世界経済の見通し改善に伴って輸出主導で景気回復が進むとみている。その一方で、南欧諸国の信用不安や、原油高などによる消費者物価上昇への警戒感もあらわにした。(表参照)

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欧州委は春と秋に詳細な経済予測を発表するが、中間期に暫定的な予測を出している。今回の暫定予測はドイツ、フランス、イタリア、英国、スペイン、オランダ、ポーランドのEU主要7カ国のデータに基づいてまとめたもの。EU27カ国ベースの予想成長率は1.8%で、こちらも前回から0.1ポイント引き上げた。

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欧州委は報告書で、輸出が引き続き景気回復を支え、それが内需にも波及すると指摘。EU最大の輸出国であるドイツの成長率は輸出増加を見込んで2.4%とし、前回から0.2ポイント上方修正した。このほか、フランスとオランダが1.7%、ポーランドが4.1%と、堅調な成長を予想している。

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一方、ギリシャ、スペインなど南欧諸国の信用不安問題については「情勢は不安定」という認識だ。欧州委のレーン委員(経済通貨問題担当)は、南欧諸国が財政再建のため厳しい緊縮政策をとっていることに触れ、「景気回復は均一ではなく、多くの国が難しい調整局面に入っている」と指摘。スペインの予想成長率は前回より0.1ポイント増の0.8%に設定したものの、低い水準にとどめた。イタリアについては前回と同じ1.1%に据え置いた。

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欧州委の大きな懸念材料となっているのが原油、食料価格の高騰による物価上昇。ユーロ圏では2月のインフレ率が2.4%まで上昇し、2008年10月以来の高水準に達した。欧州委は今回の予測で、2011年のインフレ率を2.2%とし、前回から0.4ポイントも引き上げた。ユーロ圏の物価上昇は今年1-3月期をピークに安定化に向かい、インフレ率は10-12月期には欧州中央銀行(ECB)が危険水準とする2%を下回る1.9%まで低下するとみているものの、これは原油価格が100ドル/バレル程度で推移することを想定したもの。リビアの騒乱など中東情勢によっては原油高が加速し、インフレが進むことが避けられない見通しだ。

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