2011/3/21

総合 –EUウオッチャー

EU全域で原発の安全性検査実施へ、共通の評価基準で143基を総点検

この記事の要約

EU加盟国は15日、ブリュッセルでエネルギー担当相、原子力安全当局者、原発関連企業の代表による緊急会合を開き、域内の原子力発電所の安全性を点検する「ストレステスト」を実施することで基本合意した。福島第一原子力発電所の事故 […]

EU加盟国は15日、ブリュッセルでエネルギー担当相、原子力安全当局者、原発関連企業の代表による緊急会合を開き、域内の原子力発電所の安全性を点検する「ストレステスト」を実施することで基本合意した。福島第一原子力発電所の事故を受けた措置で、域内14カ国で稼働している原子炉143基を対象に、今年後半にも共通の安全基準に基づく検査を実施する。

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欧州委員会のエッティンガー委員(エネルギー担当)は会合後の会見で、「日本の事態に照らしてリスクと安全性を検証したい」と述べ、地震、津波、テロ攻撃などの非常時を想定して原子力発電所の安全性を総点検する必要性を強調した。そのうえで同委員は、加盟国にEU共通の新たなテストを義務付ける法律はないため、各国の判断による任意ベースでの実施になると説明。早急に評価基準を策定して専門家によると独立した検査機関を設置し、今年後半の実施を目指す方針を示した。

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欧州ではチェルノブイリ原子力発電所の事故などを背景に、市民の間で原発の安全性に対する根強い不信感があったが、温暖化対策を進めるうえで石油や石炭に代わるエネルギーとして原子力を見直す「原発回帰」の動きが広がっていた。しかし、厳格な安全基準を定めている日本で発生した深刻な事故を受け、各国政府は原子力政策の見直しを迫られている。

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ドイツではシュレーダー前政権が2002年、22年までに国内にあるすべての原発施設を閉鎖する方針を打ち出したが、メルケル首相は昨年、温暖化対策とエネルギー安定供給の観点から脱原発路線を見直し、原子炉の稼働年数を平均12年延長することを決めた。しかし、同首相は今回の事態を受け、15日までに稼働年数の延長計画を3カ月凍結するほか、1980年以前に稼働を開始した原子炉7基の運転を一時停止する方針を決定した。スイス政府も14日、既存原発の改修と新規建設計画の凍結を発表した。また、欧州委のエッティンガー委員はドイツ公共放送ARDのインタビューで、「欧州は原子力なしでエネルギー需要を賄うことができるかどうかを真剣に考えなければならない」と発言。スイスやロシアなど域外の国にも新たな安全性テストへの参加を呼びかけた。

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日本からの輸入食品、欧州委が検査勧告

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欧州委員会は16日、日本から輸入された食品の放射線量を検査するよう加盟国に勧告したことを明らかにした。欧州委のビンセント報道官は15日付で食品・飼料の緊急警報システム「RASFF」を通じ、「予防的措置」として検査を指示したと説明している。日本から輸入した食品から基準値を超える放射線量が検出された場合、加盟国は速やかに欧州委に通報する必要がある。

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欧州委によると、EU諸国が2010年に日本から輸入した食品は約9,000トンの野菜とくだもの、少量の魚介類などで、金額にして約6,500万ユーロにとどまっている。

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