2011/3/21

総合 –EUウオッチャー

加盟国が財政規律強化で合意、スムーズな制裁発動可能に

この記事の要約

EU加盟国は15日に開いた財務相理事会で、EUの財政規律を定めた安定成長協定の改革案を発表した。規律違反国への制裁をスムーズに発動できるようにすることなどが柱。ギリシャなどの財政危機がユーロの信用を揺るがす事態に発展した […]

EU加盟国は15日に開いた財務相理事会で、EUの財政規律を定めた安定成長協定の改革案を発表した。規律違反国への制裁をスムーズに発動できるようにすることなどが柱。ギリシャなどの財政危機がユーロの信用を揺るがす事態に発展したことを受け、ユーロを導入してから初の抜本的な協定改定に踏み切る。

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安定成長協定では、EU加盟国に財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることを義務付けており、ユーロ参加国が違反した場合の制裁規定が既にあるが、これまで発動されたことはない。こうしたルールを厳格に適用しない姿勢がギリシャなどの放漫財政を招いたという反省を踏まえ、EUは制裁強化を決定。ファンロンパイEU大統領を座長とする作業部会と欧州委員会が連携して昨年9月に原案をまとめていた。

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今回合意した案では、赤字がGDP比3%を超えたユーロ参加国に対して、GDPの0.2%に相当する額を無利子で積み立てさせ、赤字を是正しなければ積立金をEUが没収する。また、赤字がGDP比3%を超えていなくても、債務残高がGDP比60%を超えた場合も制裁対象とし、超過分を3年間で毎年5ポイントずつ削減することを命じる。さらに、新たな順守規定として、各国の単年の歳出増加率が中期のGDP伸び率を超えてはならないというルールも盛り込んだ。

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このほか、経常収支などマクロ経済面での不均衡も制裁対象となる。経常収支、民間債務などの指標を組み合わせた「スコアボード」をまとめ、これに基づいて改善が必要と判断した国に「過剰不均衡是正手続き」を発動する。同措置に基づく是正命令に従わなかったユーロ参加国には制裁として、GDPの1%に相当する制裁金を科す。EUでは現在、財政赤字が上限を超えた国に「過剰赤字是正手続き」を発動しているが、新ルールではマクロ経済指標にも踏み込んで監視の目を強め、各国間の不均衡是正を図る。

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制裁発動に関するルールも大きく変更される。現行規定では制裁発動に複雑な手続きを要するが、新ルールでは欧州委が制裁を勧告した場合、加盟国が多数決で反対しない限り発動が決まるという「逆多数決」方式を採用する。これにより協定違反国には自動的に近い形で制裁が科されるようになる。また、没収された制裁金は、信用不安に陥ったユーロ参加国に緊急融資を行う総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」に回す。

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今回のルール改正には欧州議会の承認が必要。6月の成立に向けて、EU議長国ハンガリーが欧州議会と調整を進めることになる。

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