2011/3/28

総合 –EUウオッチャー

包括的な信用不安対策で合意、EFSF拡充は先送り=EU首脳会議

この記事の要約

EU27カ国は24、25日にブリュッセルで開いた首脳会議で、ユーロ圏の包括的な信用不安対策について合意した。財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」の融資枠 […]

EU27カ国は24、25日にブリュッセルで開いた首脳会議で、ユーロ圏の包括的な信用不安対策について合意した。財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」の融資枠を引き上げるほか、同基金を2013年6月から引き継ぐ恒常的な支援基金「欧州安定メカニズム(ESM)」の融資枠を5,000億ユーロとすることを決めた。ただ、ポルトガルが首相の辞意表明による政局混乱でEUへの金融支援要請が時間の問題とみられるなか、EFSF拡充の詳細決定が6月末まで持ち越しとなるなど完全決着とはならず、信用不安対策強化の態勢が整うまで時間がかかることになった。

\

ユーロ参加国の政府保証によるEFSFは、深刻な財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う総額7,500億ユーロの「ユーロ防衛基金」の中核。基金規模は4,400億ユーロだが、債券発行によって資金を調達する必要上、高格付けを保つため2,000億ユーロを準備金として計上しなければならず、実際の融資枠は2,500億ユーロにとどまっている。ユーロ圏17カ国は3月上旬に開いた首脳会議で、融資枠自体を4,400億ユーロに拡大することで合意していた。

\

今回の首脳会議では、融資枠拡大は承認されたものの、どのようにして基金を拡充するかついては結論を先送りした。ドイツなど信用力が高い国が融資保証を高める案が浮上していたが、ドイツと同じ立場にあるフィンランドで議会が解散され、4月に総選挙が実施されることを考慮し、6月に協議することになった。総選挙ではEFSF拡充に反対する保守政党「真のフィンランド人」の躍進が見込まれており、拡充問題が複雑化する恐れがある。

\

一方、EU版の国際通貨基金(IMF)となる「欧州安定メカニズム(ESM)」をめぐっては、ユーロ圏17カ国が21日の財務相会合で、資金計画について合意。総額7,000億ユーロ(約80兆6,000億円)の資本金を用意し、5,000億ユーロの融資枠を確保することを決めた。EU首脳会議は大筋でこれを承認した。

\

資本金はユーロ圏各国が拠出する払込資本金800億ユーロに加え、請求があって初めて支払われる請求払い資本および各国の保証で6,200億ユーロを確保する。融資枠を上回る資本金を用意することで、格付け機関から最高評価の格付けを取得し、債券発行による資金調達をしやすいようにする。

\

ユーロ圏の合意では、払込資本金のうち、ESM が始動する13年7月1日までに400億ユーロを払い込み、残りは3年間で段階的に払い込むことになっていた。しかし、EU首脳会議では、多額の拠出負担があるドイツのメルケル首相の要望により、5年間に分けて払い込む形に修正された、

\

各国の負担は、現行のEFSFでは人口を基準とした欧州中央銀行(ECB)への拠出比率に応じて決められているが、ESMでは人口より経済規模を重視し、1人あたり国内総生産(GDP)がEU平均の75%を下回る国の負担を軽減することで合意した。また、融資の金利をEFSFより低い水準とすることも決めた。

\

\

「ユーロ協定」、非ユーロ圏6カ国も参加

\

\

このほか今回の首脳会議では、ユーロ圏各国が経済政策で協調する「ユーロプラス協定」についても合意。非ユーロ圏のポーランド、ブルガリア、ルーマニア、ラトビア、リトアニア、デンマークも参加することが決まった。

\

同協定はドイツとフランスの提唱により実現するもの。各国が社会保障政策、税制、財政などで足並みをそろえることで不均衡を解消し、ユーロ圏の競争力を強化するのが狙いだ。競争力強化、雇用改善、財政健全化、財政安定の強化ついて各国が毎年、自国の事情を考慮しながら目標を設定し、その履行状況を首脳会議が監視する。

\

一方、今回の首脳会議では、EFSFから融資を受けているアイルランドが返済条件緩和を求めている問題について協議するとみられていたが、EUが域内銀行を対象に実施するストレステスト(健全性審査)の結果が出るまで先送りされることになった。

\