2011/3/28

総合 –EUウオッチャー

ポルトガル財政再建が首相辞任で混迷、EUへの金融支援要請が不可避か

この記事の要約

財政危機に直面するポルトガルの議会は23日、政府がまとめた財政再建に向けた追加削減策を否決した。これを受けてソクラテス首相は同日に辞意を表明。解散・総選挙を経て新政権が樹立するまで政治空白が生じることで、財政再建の混迷が […]

財政危機に直面するポルトガルの議会は23日、政府がまとめた財政再建に向けた追加削減策を否決した。これを受けてソクラテス首相は同日に辞意を表明。解散・総選挙を経て新政権が樹立するまで政治空白が生じることで、財政再建の混迷が必至な情勢となり、ポルトガルがギリシャ、アイルランドに続いてEUなどに緊急金融支援を要請する可能性が強まってきた。

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昨年の財政赤字がEUの財政規律で上限となっているGDP比3%を大幅に超える同7.3%に膨れ上がったポルトガルは、2012年までに赤字を上限内に抑えることを求められている。すでに政府は厳しい緊縮策を進めてきたが、市場の不安を静めるため、1年間で4度目となる赤字削減策を11日に議会に提出した。年金など社会保障関連の給付削減を柱とする内容だ。

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与党の社会党は定数230の議会で97議席しか確保していないため、追加緊縮案の採択には野党の賛同が必要だった。しかし、社会民主党など野党は、社会的弱者に大きな負担を強いるもので受け入れられないとして、全議員が反対に回った。これによってソクラテス首相は政権運営が行き詰まり、カバコシルバ大統領に辞表を提出した。

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この事態を受けて、同国では総選挙を前倒しすることになる見通しだが、実施は早くても5月となる見込み。政治空白により再生再建が宙に浮くことで、信用不安の拡大が避けられない情勢だ。24日には米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)と欧州系格付け会社のフィッチ・レーティングスが、ポルトガル国債の格付けを2段階引き下げた。

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ポルトガルは6月までに90億ユーロに上る国債の償還を控えているが、すでに高い水準に達している国債利回りが政局の混迷でさらに上昇するのは確実で、資金調達は困難な見込み。このため、市場ではポルトガルがEU、国際通貨基金(IMF)に緊急融資の要請を迫られるとの見方が強まっている。24、25日のEU首脳会議ではポルトガルの財政危機、支援問題については話し合われなかったが、ユーロ圏17カ国財務相会合の議長国であるルクセンブルクのユンケル首相兼財務相が「750億ユーロが妥当」と述べるなど、支援要請が秒読み段階に入った空気が漂っている。

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