2011/4/4

産業・貿易

クローン食品めぐる加盟国と議会の協議決裂、「新規食品規則」改正案が廃案に

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会は3月28日、新たな手法や技術によって生産された食品の安全な流通を目的とする「新規食品規則」の改正案について、調停委員会を開いて協議したが、クローン技術で生まれた家畜とその子孫の肉や乳などを利用した食 […]

EU加盟国と欧州議会は3月28日、新たな手法や技術によって生産された食品の安全な流通を目的とする「新規食品規則」の改正案について、調停委員会を開いて協議したが、クローン技術で生まれた家畜とその子孫の肉や乳などを利用した食品の扱いをめぐって調整がつかず、改正案は廃案となった。3年に及ぶ議論が振り出しに戻った格好で、当面は14年前に制定された現行法が維持されることになり、理論上はクローン技術を利用してつくられた家畜に由来する食品がEU市場に流通する可能性がある。欧州委員会はこれまでの議論を踏まえて新たな法案づくりに着手する意向を示しているが、策定には数年を要するとみられる。

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新規食品規則は主として新たな技術や手法によって生産された食品の取り扱いについて定めたルールで、1997年5月に発効した。欧州委は遺伝子組み換え、クローン、ナノテクなどの技術革新を背景に、高い水準の安全性を確保しながら消費者に新たな選択肢を提供することを目的に、2008年1月に認可手続きの一元化などを柱とする新規食品規則の改正案を提示。この中でクローン家畜に由来する食品の扱いが最大の焦点になっていた。

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欧州委は改正案を打ち出す際、「クローン食品は安全」との報告書をまとめ、クローン技術で生まれた家畜の肉や乳などを利用した食品の普及に積極的な姿勢を示していた。しかし、08年にEU各国で行われた調査では、市民の6割がクローン家畜の流通認可に反対しており、欧州議会は昨年7月、こうした世論を背景にクローン食品の全面禁止を決議。その後の協議でクローン動物の子孫に由来する食品について、ラベル表示の義務化を条件に輸入を認める妥協案を提示したが、加盟国側はクローン食品の主要輸出国である米国などとの貿易摩擦につながりかねないとしてこれを拒否。ラベル表示の対象をめぐって最後まで調整がつかず、交渉は決裂した。

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EU議長国ハンガリーのファゼカシュ地方開発相は、クローン動物の子孫から生産されたすべての食品にラベル表示を義務化するという欧州議会の提案に対し、「たった一切れのチーズやサラミにも家畜の家系図をつけなければ販売できないことになり、実行不可能な措置だ」と批判。これに対し、欧州議会の代表は「EU市民の大半はクローン技術を利用した食品の生産に反対しており、ラベル表示は最低限の要求だ」と反論。ブリュッセルに本部を置く消費者団体BEUCも、クローン食品に反対する多くのEU市民の意見が政策に反映されていないと加盟国の対応を批判している。

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