2011/4/4

産業・貿易

住宅ローンに共通ルールを導入へ、消費者保護と競争促進狙い

この記事の要約

欧州委員会は3月31日、住宅ローンの融資や借入に域内共通のルールを導入する指令を提案した。不動産を購入する消費者をリスクから守ることで、金融危機を招いた米サブプライムローンのような問題が域内で発生することを防ぐ狙いがある […]

欧州委員会は3月31日、住宅ローンの融資や借入に域内共通のルールを導入する指令を提案した。不動産を購入する消費者をリスクから守ることで、金融危機を招いた米サブプライムローンのような問題が域内で発生することを防ぐ狙いがある。また住宅ローン市場は依然として各国単位にとどまっているが、共通ルールにより競争を促すことも期待されている。

\

欧州でも住宅ブームの際には銀行や住宅ローン会社が借り手の返済能力を審査しないことや、借り手にリスクに対する警告を怠ることもあり、なかには住宅ローンを借りて投機目的で住宅を購入し短期間で売却して利ザヤを稼ぐ動きもあった。

\

今回の指令案の対象は住宅購入時の全ての住宅ローンと不動産改装のための融資で、銀行や住宅ローン会社に対しては顧客への情報提供を改善するため厳しいルールを定め、消費者に広告で融資のコストや借りられる見込みなど間違った情報を伝えることを禁じている。また「欧州標準情報シート(ESIS)」を導入して貸し手には住宅ローンの条件を明示することを義務付け、借り手には各社の住宅ローンを簡単に比較できるようにする。さらに貸し手には借り手の返済能力を審査することを義務付け、借り手も支払い能力について詳細な情報を提示することが必要となる。

\

欧州委はこうした措置により住宅ローンの返済不能に陥る人が大幅に減り、年間12億~19億ユーロに達する不良債権を防げると試算する。域内の住宅ローン市場の規模は2008年にEU全体の経済活動の半分に匹敵し、一般世帯の負債の約70%を占めている。しかし市場は各国で分断され、域内での競争は不十分なままとなっている。今回の指令案により銀行や住宅ローン会社にとっては自国以外でも融資を提供する道が開かれる。

\