2011/4/4

産業・貿易

米政府のボーイング支援は協定違反、WTOパネルがEUの主張認める

この記事の要約

世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は3月31日、米政府が米航空機大手ボーイングに対して提供した補助金はWTO協定に違反するとEUが提訴していた問題について最終報告書を発表した。報告書はEUの訴えを大筋で認 […]

世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は3月31日、米政府が米航空機大手ボーイングに対して提供した補助金はWTO協定に違反するとEUが提訴していた問題について最終報告書を発表した。報告書はEUの訴えを大筋で認めて、米政府に支援を撤回し、支援の影響を是正するよう求めた。航空機メーカーの支援をめぐっては米政府もEUのエアバスへの支援をWTO協定違反として提訴し、2010年6月にパネルが米国の主張を認める最終報告書を発表したため、EUが上級委員会に上訴している。

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今回の報告書は協定に違反する補助金は1998年から2006年の間に総額で53億ドル以上に上ると指摘。これには米航空宇宙局(NASA)による26億ドルの研究開発(R&D)プロジェクトや国防省のR&Dプロジェクト、輸出に対する22億ドルの支援などがある。また2006年から2024年までに3つの州からの税制優遇は合わせて最大40億ドルに上る可能性もあるという。エアバスは、米政府の支援により2001年から2006年の間に民生用旅客機で450億ドルに上る売上の機会を失ったと主張していた。

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今回の発表に対して米政府は、WTOのパネルが2010年6月の最終報告書でEUのエアバスに対する協定違反の補助金は200億ドルに上ると判断した点を引き合いに出し、今回の金額はこれより少ないと強調している。

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一方、欧州委員会はパネルがEUの主張を認めたことを歓迎したものの、ボーイングに対する不当な支援は240億ドル以上に上るとして、1日に上級委員会に上訴した。エアバスをめぐる上級委員会の調査のほうが数カ月も先に進んでいるためEU側は米側より先に支援停止を命じられることを懸念しており、手続きを速めることを狙ったものされる。上級委員会への上訴は30日以内となっているが、片方が手続きをした場合にはもう片方は5日以内に決定を下す必要がある。EU側の上訴は極めて戦術的なものと見られている。

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