2011/5/2

競争法

睡眠障害治療の後発薬めぐり調査、特許訴訟和解条件が焦点に

この記事の要約

欧州委員会は4月28日、米製薬大手セファロンとイスラエルの後発医薬品大手テバが結んだ特許侵害訴訟の和解契約がEU競争法に抵触する可能性があるとして、両社に対する本格調査に着手したと発表した。欧州委はセファロンがテバに多額 […]

欧州委員会は4月28日、米製薬大手セファロンとイスラエルの後発医薬品大手テバが結んだ特許侵害訴訟の和解契約がEU競争法に抵触する可能性があるとして、両社に対する本格調査に着手したと発表した。欧州委はセファロンがテバに多額の「和解金」を支払うことで、睡眠障害治療薬「モダフィニル」(商品名:プロビジル)のジェネリック薬が欧州市場に出回るのを遅らせようとしたとの疑いを強めている。モダフィニルをめぐるセファロンとテバを含む後発薬メーカーの和解契約をめぐっては、米連邦取引委員会(FTC)が2008年に反トラスト法違反でセファロンを連邦地裁に提訴している。

\

欧州委によると、セファロンとテバは05年、英国と米国で係争中だった特許侵害訴訟で和解に達したが、テバは和解条件の1つとして、12年10月までEU加盟国とアイルランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーにプロビジルの後発薬を投入しないことに同意した。欧州委は両社の合意によって欧州市場へのジェネリックの投入が遅れ、睡眠障害を抱える多くの患者が不利益を受けた可能性があると指摘。こうした点に重点を置いて調査を進める方針を示している。

\

プロビジルは主にナルコレプシーや閉塞性睡眠時無呼吸症候群などの治療薬として処方されているが、副作用や行為障害を伴わずに覚醒状態を維持することが可能なため、長距離トラックの運転手が服用したり、軍隊で使用されたケースも報告されている。プロビジルの昨年の売上高は11億2,000万ドルに上った。

\

欧州委は大手製薬会社が特許の囲い込みなどさまざまな方法でジェネリック薬の投入を遅らせているとして、08年から欧州医薬品市場における競争状況について広範な調査を進めている。これまでの調査から、大手製薬会社は1つの医薬品に対して域内各国で複数の特許を取得する「特許集積(パテントプール)」と呼ばれる手法を使ったり、特許侵害訴訟を起こして和解に持ち込み、後発薬メーカーに金銭を支払う「リバースペイメント」を通じてジェネリック薬の投入時期を遅らせたり、販売方法や地域などに制限を加えていることが判明。欧州委は特にリバースペイメントを問題視し、業界で広く行われているこうした商慣行はEU競争法が禁止する市場支配的地位の乱用や競争制限的行為にあたるとの見方を強めている。

\