2011/5/30

環境・通信・その他

通信規制改革法が施行、加盟国の法制化作業に遅れ

この記事の要約

電子通信市場の急速な変化に対応するため、EUが2009年に制定した通信規制改革に関するルールが5月25日付けで施行された。新ルールは2つの指令と1つの規則から成り、電子通信分野における消費者保護の強化、公正な競争の促進、 […]

電子通信市場の急速な変化に対応するため、EUが2009年に制定した通信規制改革に関するルールが5月25日付けで施行された。新ルールは2つの指令と1つの規則から成り、電子通信分野における消費者保護の強化、公正な競争の促進、効果的で一貫した規制制度の確立、ネットワークの開放性と中立性の確保などに主眼を置いている。加盟国は同日までに2つの指令を国内法に転換することが義務付けられていたが、大部分の国で法整備が遅れているのが実情。このため欧州委員会は対応が遅れた国に対して法的措置を検討すると警告している。

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通信規制改革に関する指令の1つは「より良い規制」指令、もう1つは「市民の権利」指令と呼ばれるもので、新規則は欧州通信監督機関(BEREC)の創設を規定している。規制改革は消費者の権利強化と選択肢の拡大、オンライン上における個人情報保護と安全の確保を最大の目的としており、具体的には事業者に(1)固定および携帯電話の番号を維持したまま、1営業日以内に事業者を変更できる権利の保障(2)トラフィック管理の方法、インターネット回線の接続速度などサービス品質の最低水準保証、基準を達成できなかった場合の補償など、消費者への情報提供の改善(3)個人情報保護の強化と個人データの侵害に関する当局への報告(4)ユーザー情報を記録するクッキー等の使用に関する事前同意の取得――などを義務づける内容となっている。

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一方、規制制度に関しては、EU全体の通信規制を統括するBERECの創設のほか、競争問題を解決する最終手段として、通信事業者にネットワーク部門とサービス部門の分離を命じる権限を各国の規制当局に付与することが盛り込まれている。

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AP通信が欧州委担当官の話として報じたところによると、国内法への転換期限が2日後に迫った今月23日の時点で法整備が完了しているのは27カ国のうちデンマークとエストニアの2カ国のみ。さらに6、7カ国が期限までに必要な作業を終えるとみられるものの、残り3分の2程度は期限を守れない公算が大きいという。同委のトッド報道官は「法制化の期限を決めたのは加盟国であり、新ルールの実施を遅らせるいかなる口実も認められない」と強調。数カ月以内に法整備を完了できない場合は欧州司法裁判所への提訴を検討すると警告している。

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