2011/6/6

総合 –EUウオッチャー

ECB総裁が「ユーロ圏財務省」創設提唱、危機対応で拒否権も付与

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は2日、ドイツのアーヘンで講演し、ユーロ圏17カ国の経済政策を統括する「ユーロ圏財務省」の創設を検討すべきとの考えを明らかにした。各国政府が債務危機への対応に苦慮している現状を踏まえた […]

欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は2日、ドイツのアーヘンで講演し、ユーロ圏17カ国の経済政策を統括する「ユーロ圏財務省」の創設を検討すべきとの考えを明らかにした。各国政府が債務危機への対応に苦慮している現状を踏まえた発言。EUや国際金融機関などから支援を受けたユーロ導入国で財政再建が進まず、ユーロ圏の安定を脅かす恐れがある場合、EU当局に「拒否権」を発動して財政運営に介入する権限を与える必要性にも言及している。

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トリシェ総裁は「ユーロ危機は存在しない」と強調したうえで、ギリシャやアイルランドなど一連の財政危機を教訓に、ユーロ圏における経済統治の仕組みを抜本的に見直す必要があると指摘。「単一市場、単一通貨、単一の中央銀行を持つ経済領域で、ユーロ圏共通の財務省を想定することは大胆すぎるだろうか」と発言した。

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総裁はさらに、危機に陥った国に対して「強力なプログラム」の下で支援を行うことは「正当化される」ものの、支援を受けた国で財政再建や構造改革がうまく進まない場合は「第2段階」の措置が必要と指摘。実現にはEU条約の改正が条件になるとしたうえで、EU当局に「大きく方向を見失った国々」の財政政策に対して拒否権の発動を含む強力な発言権を与え、歳出計画の見直しなどを進めるべきだとの考えを示した。

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同総裁の構想によると、ユーロ圏財務省は「必ずしも巨額の域内予算を管理する必要はなく」、少なくとも3つの分野で「直接的な責務を果たす」ことが期待される。具体的には「財政政策と競争政策の監視」、「域内の統合された金融セクターに対するすべての責務」、「国際金融機関でユーロ加盟国を代表すること」と説明している。

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