2011/6/20

総合 –EUウオッチャー

イタリアが原発凍結、エネルギー戦略見直し必至

この記事の要約

イタリアで原子力発電所の再開の是非を問う国民投票が実施され、反対票が賛成票を圧倒的に上回り、再開凍結が決まった。これにより政府は再生可能エネルギー利用拡大などエネルギー戦略の見直しを迫られることになる。\ 12、13日に […]

イタリアで原子力発電所の再開の是非を問う国民投票が実施され、反対票が賛成票を圧倒的に上回り、再開凍結が決まった。これにより政府は再生可能エネルギー利用拡大などエネルギー戦略の見直しを迫られることになる。

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12、13日に行われた国民投票は投票率が54.79%となり、原発再開への反対票は94.05%に達した。原発再開を模索していたベルルスコーニ首相は「政府と議会は結果を完全に受け入れる義務がある」と述べ、原発の新設や再稼働を当面断念する意向を表明した。

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ミラノ工科大学経営大学院のジャンルカ・スピナ学長は、イタリアはチェルノブイリ原発事故を受けて1987年に国内の原発の稼動を停止しており、国民投票の結果は短期的に大きな変化をもたらすことはないと見る。ただ、原発の凍結により、2030年までに電力の25%を原子力で賄うというベルルスコーニ政権の計画は実現不可能となるため、長期的には新たなエネルギー源を確保するための取り組みを迫られるとの見方を示した。

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2010年の統計によると、イタリアの消費電力のうち64.8%は化石燃料によるもので、22.2%が再生可能エネルギー、残り13%はフランスなどからの輸入だった。パオロ・ロマーニ経済発展相は14日、記者会見で再生可能エネルギーの割合を大幅に引き上げる方針を表明した。ただ、ボッコーニ大学のルイジ・デ・パオリ教授は、「再生可能エネルギーのシェアを3割以上に引き上げることは可能ではあるが、困難が伴いコストもかさむ」と指摘する。昨年の再生可能エネルギーの電源別シェアは、水力が14.9%、バイオマスが2.7%、風力2.5%、地熱が1.6%、太陽光が0.6%だった。デ・パオリ教授によると、水力発電にはこれ以上の成長の余地が残されておらず、風力は国内に適した立地が少ない。また、太陽光については巨額の補助が必要な点を問題視する。これに対し、太陽光発電の業界団体Assosolareのジャンニ・キアネッタ会長は、「太陽光発電のシェアは20年までに8~10%に引き上げることが可能だ。発電コストは下落しており、補助は必要なくなる」と語り、太陽光発電の成長に自信を示している。

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政府は夏以降に新たなエネルギー戦略を策定するための官民会議を開き、年内に新戦略をまとめると方針だ。

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