2011/6/20

環境・通信・その他

排出量取引制度のセキュリティ強化案承認、登録システムの一体化など

この記事の要約

EU加盟国の代表で構成する気候変動委員会は17日、EUの二酸化炭素(CO2)排出量取引制度(ETS)にかかわる電子システムのセキュリティ強化を目的とする法案を承認した。新たに「EU炭素登録所(仮称)」を発足させ、国別の登 […]

EU加盟国の代表で構成する気候変動委員会は17日、EUの二酸化炭素(CO2)排出量取引制度(ETS)にかかわる電子システムのセキュリティ強化を目的とする法案を承認した。新たに「EU炭素登録所(仮称)」を発足させ、国別の登録所に排出量を登録する現在の方式に代わり、排出量を一元管理するシステムに移行することなどが柱。今年1月に域内の排出量取引所の登録システムが悪質なフィッシング被害を受け、総額3,200万ユーロに上る排出権登録証が盗まれたことなどを教訓に、EU全体で排出量取引システムのセキュリティ強化を推進する。今後、欧州議会と閣僚理事会で法案について審議する。

\

欧州ではEU加盟国など30カ国で排出量が取引されているが、登録所の安全性に関する統一された基準がないため国によってセキュリティ対策にばらつきがある。なかにはパスワードを使って登録所の口座に簡単にアクセスできるケースもあり、ハッカーに排出権登録証を盗まれるといった被害が起きている。今年1月のフィッシング攻撃ではETSの登録ユーザーに偽の電子メールを送り、取引所のホームページを装った架空のログインページに誘導してユーザーIDやパスワードを入力させるという手法により、ドイツ、ベルギー、デンマーク、オランダ、イタリア、ギリシャなどで被害が拡大。域内13カ国で最大15日間にわたり取引所のサイトが閉鎖される事態を招いた。

\

新ルールによると、国別の登録所で個別に排出量を管理する現在のシステムに代わり、13年以降はEU炭素取引所が排出量を一体的に管理する仕組みに移行する。また、今後は排出枠のシリアル番号を市場参加者に開示することが禁止される。さらに13年から実施されるオークションを通じた排出枠の売却で得た利益の一部を低炭素化技術の開発プロジェクトに投資する「NER 300」の枠組みに関連して、今後新たにETSに参加する事業所向けに用意した予備の排出枠を欧州投資銀行(EIB)に移管し、EIBを通じて売却する仕組みを導入することも法案に盛り込まれている。

\