2011/6/27

総合 –EUウオッチャー

欧州議会が経済統治法案の採決見送り、財政規律違反制裁で溝

この記事の要約

欧州議会は23日の本会議で、EUの財政規律を定めた安定成長協定の改革案を柱とするユーロ圏の経済ガバナンス(統治)強化のための包括法案について審議したが、規律違反国に対する制裁発動の手続きをめぐる加盟国との対立を解消するこ […]

欧州議会は23日の本会議で、EUの財政規律を定めた安定成長協定の改革案を柱とするユーロ圏の経済ガバナンス(統治)強化のための包括法案について審議したが、規律違反国に対する制裁発動の手続きをめぐる加盟国との対立を解消することができず、加盟国が提示した最終案の採決を見送った。欧州議会は7月上旬の本会議で採決を行う方針を示唆し、最終合意に向けて加盟国側に譲歩を迫っている。

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安定成長協定は加盟国に財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることを義務付けており、違反した場合の制裁規定も定めている。しかし、実際には制裁が一度も発動されず、これがギリシャなどの財政危機を招いたとの反省から、ファンロンパイEU大統領を座長とする作業部会と欧州委が共同で制裁強化の具体案を策定。6月中の法案成立に向け、EU議長国ハンガリーと欧州議会の間で調整が進められてきた。

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問題となっているのは、規律違反国への制裁を決定する際の手続き。欧州議会は欧州委が制裁を勧告した場合、加盟国が多数決で反対しない限りそのまま発動が決まる「逆多数決」方式の導入を主張している。これに対し加盟国側は、財政赤字がGDP比3%の基準を超えた場合に発動する「過剰赤字是正手続き」については逆多数決方式の導入を受け入れたものの、財政赤字のGDP比率が3%に近づいたり、債務残高のGDP比率が60%を超えた場合に欧州委が勧告を行う「予防手続き」に関しては逆多数決の採用を拒否。20日の財務相理事会で採択した最終案でもこの点は譲らず、欧州議会との対立が続いている。

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欧州議会経済通貨委員会の広報担当は「(逆多数決を導入しなければ)財政悪化が深刻化する前に制裁を発動する道が閉ざされ、経済統治を強化することはできない」と強調。そのうえで「夏前に決着させる用意がある」と述べ、引き続き加盟国側に譲歩を求めていく方針を示した。

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