2011/6/27

産業・貿易

専門職にEU共通の身分証、欧州委が職業資格の相互認証制を提案

この記事の要約

欧州委員会は22日、専門的な資格を持つ人材の域内移動を容易にするため、域内共通の身分証を発行して職業資格を相互に認証する制度の導入を提案した。国ごとに資格が異なるため専門職の移動が制限され、分野によっては深刻な人材不足を […]

欧州委員会は22日、専門的な資格を持つ人材の域内移動を容易にするため、域内共通の身分証を発行して職業資格を相互に認証する制度の導入を提案した。国ごとに資格が異なるため専門職の移動が制限され、分野によっては深刻な人材不足を招いている現状を改善するのが狙い。欧州委は9月20日まで意見募集を行い、各方面からの反応を踏まえて年内に法案をまとめる。

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域内で国ごとに資格が異なる職種は医師、看護師、弁護士、会計士、建築士などおよそ800種に上り、このうち医療分野では将来的に100万人規模の人材不足に陥る可能性が指摘されている。EUは2005年に「職業資格の認証に関する指令」を制定し、専門知識を持つ人材の域内移動促進を図ってきたが、実際に域内の他の国で職に就くには資格認定のための煩雑な手続きが必要で、多くの就労機会が奪われている。

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欧州委は今年4月にまとめた「欧州単一市場法」の最終案で労働力の流動性確保を優先課題の1つに挙げ、国ごとに異なる制度や法律によってとりわけ専門職の域内移動が妨げられていると分析。加盟国間で資格の相互認証を進め、高い専門知識を持つ人材が国境を越えて活動できる環境を整える方針を打ち出していた。

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提案によると、専門的な資格を持つ人材に対し、出身国の監督官庁は加盟国間の情報交換や電子政府サービスの基盤となる「域内市場情報(IMI)システム」を活用して「プロフェッショナル・カード」と呼ばれる身分証を発行。カードを提示すれば域内のどこでも職に就くことができる制度が導入される。また、医療従事者や建築士などが自国以外で就労する際に義務付けられる研修は簡素化され、期間も大幅に短縮される。ただし、金融サービス分野はスキームの対象外となる。

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