2011/7/4

総合 –EUウオッチャー

アイスランドと加盟交渉開始、漁業が最大の焦点に

この記事の要約

EUとアイスランドが6月27日、加盟交渉を正式に開始した。すでにアイスランドはEU加盟国を主体とする欧州経済領域(EEA)に参加し、EU経済に事実上組み込まれていることから、過去のEU拡大と比べて交渉はスムーズに進む見通 […]

EUとアイスランドが6月27日、加盟交渉を正式に開始した。すでにアイスランドはEU加盟国を主体とする欧州経済領域(EEA)に参加し、EU経済に事実上組み込まれていることから、過去のEU拡大と比べて交渉はスムーズに進む見通し。漁業をめぐる交渉が最大の焦点となる。

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これまでアイスランドは、あえてEU加盟を見送ってきた。しかし、2008年の金融危機で大きな打撃を受けたことから、政府はEUの傘に入ってユーロも導入し、信用を回復することで経済再建を進める必要があると判断。2009年7月に加盟を申請し、昨年10月にEUから加盟交渉開始を承認されていた。

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アイスランドはEEA参加によって国内法とEU法の調和が進んでおり、27日には35に上る交渉分野のうち「公共調達」「情報社会・メディア」「科学・研究」「教育・文化」の4分野で交渉を開始。「科学・研究」「教育・文化」については即日で交渉を完了し、順調なスタートを切った。中東欧諸国やトルコと比べて異例の速さだ。

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ただ、難航が予想されるのが漁業分野での交渉。アイスランドはEUより厳しく漁業資源を管理しながら漁業水域を保全してきたが、EUに加盟すると共通漁業政策に組み込まれ、統制権を失うことになる。同国で行われている捕鯨も、EUのルールでは禁止されている。

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加盟交渉では、これらの問題をめぐり、特例扱いを求めるアイスランドとEUの激しい攻防戦が展開されるのは必至。アイスランドの交渉代表を務めるスカルプヘイジンソン外相は、加盟交渉の進展について「すべては漁業にかかっている。EU側が我が国の主張に耳を傾け、それを受け入れるならスムーズに進むだろう」と述べ、強硬な姿勢を示している。

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08年に破たんした同国大手銀行ランズバンキのネット銀行「アイスセーブ」の外国人口座が閉鎖されたことで、英、オランダ人預金者の53億ドルの資金が凍結されている問題も大きな障害だ。肩代わりして国内の預金者に払い戻した英、オランダ政府は、アイスランドによる返済を加盟の条件としているが、同国は返済法案を2度にわたって国民投票で否決し、解決が暗礁に乗り上げている。

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同問題が解決したとしても、アイスランドが不利な条件で返済を迫られる場合は国民が反発し、加盟条約批准の可否を問う国民投票で批准が否決される可能性もある。

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