2011/7/4

産業・貿易

EU共通特許の運用ルール、産業相理が実施規則案を承認

この記事の要約

EU加盟国は6月27日の産業相理事会で、域内共通の単一特許制度の運用ルールを定めた規則案の内容で合意した。加盟国と欧州議会はすでにイタリアとスペインを除く25カ国が共通特許制度を先行導入する計画を正式に承認しており、2つ […]

EU加盟国は6月27日の産業相理事会で、域内共通の単一特許制度の運用ルールを定めた規則案の内容で合意した。加盟国と欧州議会はすでにイタリアとスペインを除く25カ国が共通特許制度を先行導入する計画を正式に承認しており、2つの規則案には出願から交付までの手続きや出願書類の翻訳に関する具体的なルールが盛り込まれている。今後、欧州議会で規則案について審議を行う。

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現在EUで特許を取得する仕組みとしては、各国で出願して個別に審査を受ける方法と、欧州特許庁(EPO)に出願して「欧州特許」を取得する方法があるが、欧州特許も最終的な認可権限は各国の特許庁が握っているため、出願人は特許を取得したい国の制度に合わせてそれぞれ書類を用意しなければならず、翻訳などの費用が企業にとって大きな負担になっている。これに対し、新たに創設されるEU特許では1つの言語で出願すれば済むため手続きが大幅に簡素化され、認可されれば同制度に参加するすべてのEU加盟国で同じ効力を持つ特許を取得することができる。ただ、使用言語を英語、仏語、独語の3言語とする案をめぐり、自国言語が選択肢から除外されることに難色を示すスペインとイタリアの強い反発で調整が難航。紆余曲折の末、加盟国のうち9カ国以上の「有志」による先行統合を認める仕組みを活用し、EU特許を支持する25カ国が新制度を導入する計画が正式決定された。

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規則案によると、EU特許はいずれの言語でも出願が可能だが、審査のため英仏独のいずれか1言語への翻訳が必要となる。また特許取得後は、特許請求の範囲(クレーム)が他の2言語(たとえば英語で出願した場合は仏語と独語)に翻訳される。さらにすべての利害関係者が特許文献にアクセスしやすくするため、最大12年の移行期間を置いて、仏語または独語で付与された特許関連の資料は英語に、英語で交付されたものについては仏語と独語に翻訳される。さらに新制度の導入により、これら3言語を母語とする国以外の企業が不利益を受けることのないよう、一連の翻訳にかかる費用を域内に拠点を置くすべての特許出願人が共同で補填する仕組みを導入する計画も規則案に盛り込まれている。

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