2011/7/11

競争法

独ベーリンガーへの調査打ち切り、特許紛争終結で

この記事の要約

欧州委員会は6日、独製薬大手ベーリンガーインゲルハイムに対する競争法違反の調査を打ち切ったと発表した。欧州委はベーリンガーが慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬に関連して特許による囲い込みを行い、ライバルの参入を阻止しよ […]

欧州委員会は6日、独製薬大手ベーリンガーインゲルハイムに対する競争法違反の調査を打ち切ったと発表した。欧州委はベーリンガーが慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬に関連して特許による囲い込みを行い、ライバルの参入を阻止しようとしたとの疑いを強めていたが、同社の知財戦略によって新薬の投入が妨害されたと主張するスペインのアルミラルとベーリンガーの間でこのほど和解が成立し、これにより競争阻害要因は取り除かれると判断した。

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問題となっていたのはベーリンガーの気管支拡張剤「スピリーバ(一般名チオトロピウム)」。スピリーバは同社の主力製品の1つで年間売上高は世界全体で約30億ユーロに上る。ベーリンガーは2003年にスピリーバの特許を出願し、欧州特許を取得したが、COPD治療に有効な3つの成分とアルミラルが発見した新たな有効成分の配合がクレームに含まれていたため、アルミラルは同社が肺疾患治療薬の分野に参入するのを阻止する目的でベーリンガーが特許による囲い込みを行っているとして異議を申し立てた。

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こうした流れを受け、欧州委は07年2月にベーリンガーに対する調査を開始。ベーリンガーが特許出願にあたり、有利な立場で審査を受けるため欧州特許庁(EPO)に誤解を与えるような情報を提供したかどうかに重点を置いて調査を進める一方、当事者双方に和解による問題解決を促していた。

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欧州委によると、ベーリンガーとアルミラルの和解合意は、スピリーバに含まれる有効成分の配合について◇基本特許によって改良発明の実施を阻止するブロッキングを解除する◇欧州域外の2カ国でライセンス供与する――などが柱。両社は係争中の訴訟をすべて終結させることでも合意した。

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一方、欧州委が同日公表した製薬業界の特許侵害訴訟における和解内容に関する調査報告によると、2010年に成立した和解合意のうち、競争法の観点から問題があると考えられるケースは全体の3%程度にとどまり、全体として改善傾向にあることが確認された。2008年に行った最初の調査では、過去8年間に成立した和解合意のうち22%に競争法違反の疑いがあるとされていた。欧州委は12年に3回目の調査を実施する方針を示している。

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欧州委は大手製薬会社が特許による囲い込みなどさまざまな方法でジェネリック薬の投入を遅らせているとして、08年1月から欧州医薬品市場における競争状況について広範な調査を進めている。特に問題となっているのは大手製薬会社が特許侵害訴訟を起こして和解に持ち込み、後発薬の投入時期を遅らせたり、販売方法や地域などに制限を加える目的で、ジェネリック薬メーカーに「和解金」を支払う「リバースペイメント」と呼ばれる慣行。欧州委は業界で広く行われているこうした商慣行について、EU競争法が禁止する市場支配的地位の乱用や競争制限的行為にあたるとの見方を強めている。

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