2011/7/18

産業・貿易

欧州委が共通漁業政策の改革案発表、漁獲割当の国内取引制度導入など柱

この記事の要約

欧州委員会は13日、環境・経済・社会面で持続可能な漁業を実現することを目指したEU共通漁業政策(CFP)の改革案を発表した。2015年までに水産資源の乱獲をなくして持続可能な漁獲水準を確保するため、漁獲物を水揚げせずに海 […]

欧州委員会は13日、環境・経済・社会面で持続可能な漁業を実現することを目指したEU共通漁業政策(CFP)の改革案を発表した。2015年までに水産資源の乱獲をなくして持続可能な漁獲水準を確保するため、漁獲物を水揚げせずに海に投棄する行為を禁止するほか、漁獲割当を国内で取引できる制度の導入によって漁業の合理化を図ることなどを柱とする内容。欧州議会と閣僚理事会の承認を経て2013年1月の新ルール導入を目指す。

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欧州委によると、地中海で漁獲される水産資源の83%、大西洋でも63%で乱獲による個体数の減少が続いており、新たな対策を講じなければ、EU周辺海域で漁獲される136品種のうち、10年後の時点で健全性を維持できるのは8品種にとどまるとみられている。

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欧州委は持続可能な漁業を実現するには早急にあらゆる政策を動因し、E U全体で水産資源保護の取り組みを強化する必要があると指摘。15年までに水産資源を減らすことなく漁獲量を最大化する「最大維持可能漁獲量(MSY)」の確保を最大の目標に掲げ、実現に向けた具体策を提案している。

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改革案によると、EUレベルでさまざまな領域の詳細ルールを規定する従来の方式に代わり、複数年の行動計画に沿ってEUが全体の枠組み、原則、目標、達成期限などを設定したうえで、加盟国がそれぞれ実情に合わせて実施方法を決定できるシステムに移行する。乱獲防止に向けては市場価値が低いなどの理由により、漁獲物をその場で海に投棄する行為を禁止し、加盟国はすべての漁船に対し、漁獲物がすべて水揚げされたかどうかを監視するためのモニター装置の搭載を義務付ける。

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また、域内で操業する漁船の数を減らす取り組みの一環として、加盟国が各漁船に配分する漁獲割当を国内で取引できる制度を導入し、廃業を考える漁業者などが第3者に権利を譲渡しやすくする。ただし、船の長さが12メートル未満の漁船については加盟国の判断で適用除外とすることができる。すでにこうした制度を導入しているデンマークでは過去4年で漁船数が30%減少しており、欧州委は合理化を通じて漁業従事者の所得水準が大幅に上昇すると説明している。

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